- 議論の整理
生体計測工学は生物の複雑な動作を物理量を用いて記述することで、運動のメカニズムを解明する手掛かりを与える。運動の仕組みが分かれば、反対に運動機能を操作することもできる。このような形で当該領域は特に医療面におけるリハビリテーションなどに応用されてきた。生体計測工学で最も一般的に用いられるのは筋電図であるが、この筋電図を用いたバイオフィードバックによって神経に障害を抱える人々の治療を行うことができることが近年分かっている。
- 問題発見
当該領域において、村岡教授は治療的電気刺激(TES)を長時間にわたって行うことのできるIVESという装置を開発している。TESによる随意運動の介助や痙性の抑制が中枢神経系を可塑的に変化させることが報告されており、麻痺肢に対してIVESを用いることによってニューロリハビリテーションを行うことができる可能性がある。実際、運動麻痺の軽度な慢性期脳卒中片麻痺患者に対して、IVESによる介入を行ったところ、5日間の治療で上肢の運動機能の改善に繋がったことが確認されている。それでは、このIVESを他の部位にも応用できないだろうか。
- 論証
IVESの最も大きな利点は、患者自らの意思に応じた電気刺激を行うことができる点である。安静時には閾値以下の強度の刺激を与え、随意収縮を検出した場合にのみそれに比例した刺激を与えるという仕組みによって、日常動作を妨げずに治療を遂行できる。従って、問題となるのは日常的に用いる際の携帯性や電力源の確保であり、この点について検討を行いたいと考える。さらに上肢以外に用いる際に電極の貼り付け位置をどの部分に設定すれば良いのかを考える必要もある。
- 結論
生体計測工学を用いた医学的治療の今後の展望としては、機器の小型化が進み、スマートフォンなどの情報通信技術との連携が行われるだろうと予想される。すなわち、この研究は人々の生活により密接したものになると考えられ、その意義は大きいといえる。
- 結論の吟味
上記研究を行うにあたって、生体計測工学分野において数多くの業績を上げてきた村岡教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
村岡慶裕 (2017) 「IVESの開発と今後の展望」The Japanese journal of rehabilitation medicine. 54(1), 23-26
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