■議論の整理
芸術作品において、作者本人が書いたものであるかどうかはその価値評価に大きな影響を与える。絵画であればその作品が作者本人の模写かどうかは常に重要な論点だ。しかし、版画や写真などの何度も複製できるものでは、どの作品が「本物」とするかを考えることは難しい。芸術が大量生産される過程でオリジナル版から失われる権威を、ベンヤミンはアウラと呼んだ。現代ではデジタル絵画が一般的になり、絵画においても複製がより簡単になった。
■問題発見
漫画の原画は、時に原画展に芸術作品として展示される。漫画の原画は、かつてであれば肉筆からでしか感じられない作者の存在感を表すものだった。しかし、デジタルデバイスを使用して書かれることが増えた現在、原画展のあり方も大きく変容してきている。デジタル原画は製作過程が見えにくいため、どのように描かれたのかを映像にして並べて見せる演出が行われることも多い。原画だけでなく、漫画そのものも大きく変わってきた。今までは雑誌に掲載されることが一般的だったが、pixivやTwitter、Instagramなどを通じて作品を公開している作家も多い。そのようなSNSで人気を集めた作品が書籍化されるケースも増えてきている。SNSで公開された作品は、常に盗用の危険に晒されている。
■論証
Twitterには「パクツイ」と呼ばれる、他社のTweetをそのままコピーして別の人が呟く行為がある。Twitterに代表されるような多くのSNSではアカウント名を変えることも簡単なため、別人だと気付かずに見てしまう人も多い。この状況は、オリジナルであることが度外視されるだけでなく、作者すらも強く意識されることがなくなっている現状を表しているように思える。
■結論
ベンヤミンのアウラについての言説を理解し、昨今の芸術作品におけるオリジナル性、そして作者の不在への考えを深めていきたい。
■結論の吟味
以上の理由から、貴学教育学部複合文化学科に入学し、高橋順一教授の研究会で学ぶことを強く希望する。
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