議論の整理・・・
歴史学や文学の分野では近代は重要な研究対象であり、当時活躍した人物は多くの人に知られ、活発に議論が交わされてきた。しかし近代美術の分野については長らく軽視され、十分に研究が深められてこなかったと考えられている。美術史学会でも1980年代に至るまで近代美術の論考をほとんど掲載してこなかった。これについては1900年のパリ万博の際に刊行された『稿本日本帝国美術略史』の影響が指摘されている。日本美術を体系的にまとめた書籍はこれが初めてであり、そして本書の記述は江戸の終わりまでで終了しているのだ。このために美術の考察対象が江戸時代で区切られていると考えられており、日本の美術研究家が『稿本日本帝国美術略史』を重視したという以上に、海外の日本美術研究家が明治以降の美術に触れる機会が少なかったと考えられるだろう。
問題発見・・・
現代日本においても自国のアーティストは軽視される傾向があり、アメリカやアジアなどの他国で評価されて世界的な地位を確立してから初めて日本で大々的に取り上げられるようになるという現状がある。草間彌生、村上隆、イケムラレイコ、塩田千春などがその例として挙げられる。世界的アーティストを自国で育成し、発見するにはどのような施策が必要なのだろうか。
論証・・・
上記の問題について考察するために、まずは現代のアーティスト評価の現状を考察する。どのようなメディアに露出し、どこで作品展示をすることで評価を確立していくのか。近代日本美術の評価の歴史を研究することも有意義であると考えている。その上で、日本のアートシーンの現状を他国と比較して分析し、改善点を洗い出していく。
結論・・・
貴学文化構想学部にて近代日本美術史に精通した丹尾安典教授のもとで上述の研究を進めることを希望する。
丹尾安典「近代画説10」明治美術学会112001年12月-
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