早稲田大学 文学部 AO入試 志望理由書 提出例(岩田圭一ゼミ向け)

■議論の整理

ソシュール言語学が明らかにしたことは、言語は差異の体系だということだ。私たちは普段言語を用いてコミュニケーションをとっており、その者がその名前であることに対して、疑いを持たない。しかし、蝶と蛾を区別する言語体系と、蝶と蛾を区別しない言語体系では、蝶と蛾の存在はいたり、いなかったりすることになる。このように、何かか何かであるために、言語の中で差異の切れめが入り、分節化して初めて物に名前がつくことになるのだ。

 

■問題発見

ソシュール言語学の持ちだしたテーゼは、その後構造主義と呼ばれ、他の分野においても大きな影響を与えた。人間が主体的に決めていたと感じていたもろもろのものは構造によって成り立っており、構造によって人間の思考が左右されているという考えの琴だ。しかし、もう一度原点に立ち返ってみると、なぜそれがそのなまえになったのかのオリジンを探究することができないのではあるまいか。

 

■論証

りんごがりんごだとして、なぜそれをりんごとして認識し、他のものと区別するような形相を私たちは関知することができるのか。この問いに答えるには、私たちの魂の中にある知性の働きを抜きにしてはやはり考えることができないのではないだろうか。実在があり、その実在は質料を持っている。その質料からある形相を取り出し、私たちはそれを「りんご」と認識し、他者と共有する。この知性の働きにおいて、なぜそれをりんごと判断したのかは、他との差異と言う側面を無視することはできないが、やはり、りんごをりんごとして取り出した抽象化作業の内に立ち返って考えてみることが必要なように思われる。

 

■結論

ソシュール言語学において説明できないのは、言語の恣意性だ。いわばなぜそれがその名前になったのか、という結びつきは恣意的なもの、でたらめなものだという考えである。しかし、名づけの行為がすべて知性の綿密な作用だとはいわなくても、そこにある種の思惟行為を考えてみることもまったく無益なことではないだろう。ソクラテスがなんであるかを示すとき、身体の質料を答えるのではなく、人間だと答え、またソクラテスの思想を説明しだし、質料から形相を抽象化して説明する。ここにすべての人間との対比を潜り込ませて、差異をもとに説明する方法を私たちは取っているのだろうか※1。

 

■結論の吟味

アリストテレスの学問はこのような問いに対する古典的かつ重要な視点を与えてくれるかもしれない。構造主義が廃れ、ポストモダンと呼ばれるような思想界に会ってなお、黙殺されてしまうような考えに光を与えてくれるのは、ギリシア哲学の豊饒な思想に他ならないと考えている。上記のようなことを研究したいと考え、貴学への入学を希望する。

 

※1岩田圭一「知性のエネルゲイア――アリストテレスの治世論と「離在形相」の概念――」『早稲田大学大学院文学研究科紀要』(62)2017

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