早稲田大学 文学部 AO入試 志望理由書 提出例(大稔哲也ゼミ向け)

■議論の整理

グローバリズムが進行する中、宗教的対立による民族主義や排外運動が目立つようになってきて久しい。その主な内実は一部の過激なイスラム教によるテロ活動だが、イスラム教とキリスト教は本来排外的な関係にあるわけではない。

 

■問題の発見

西洋とアジアの接合点であるエジプトでは、長らくイスラム教とキリスト教が共存してきた。エジプトのキリスト教の歴史は長く、コプト・キリスト教が人口の6~12パーセントはいると言われており、一つの小国家ほどの教徒が存在する。彼らはどのように共存し、有効な関係を築いてきたのだろうか。

 

■論証

イスラムの経典『クルアーン』には次のような教義が存在する。「宗教に強制があってはならない(『クルアーン』第五章32節)」「彼らの宗教を、信仰を強制することはできない(第八十八章21-22節)」。このように、イスラムの経典はきわめて寛容な体系を有しており、預言者であるムハンマド(マホメット)は今まで様々な啓典を与えられてきた最後の預言者であるが、それまでにも多くの預言者がいたことを否定する体系ではない。

 

■結論

イスラム教は、啓典を与えられた預言者は大切に庇護してきた。啓典を与えられてきた預言者によって先導されてきた「啓典の民」はどれも庇護されるべきで、大切な存在だ。その預言者には、イエス・キリストもいるし、モーゼもいる。そのため、キリスト教徒も大切な「啓典の民」で、改宗を強制するべき相手ではない。彼らが改宗を呼びかけるときは、教え諭すことしか許されていないのだ※1。

 

■結論の吟味

9.11の世界同時多発テロ以降、イスラム教は厳格で排外的な思想を有する者だとみなされることが多くなっている。しかし、そもそものイスラム教はほかの宗教を容認し、庇護する寛容の体系を競技の中に有している数少ない宗教だ。だからこそ、エジプトではキリスト教が存続してきたのし、「アラブの春」が実現したのだといえる※2。現代の二分された宗教対立や、グローバリズムの中で人々のアイデンティティを保証する宗教のありようをエジプトの宗教という観点から考察したいと考え、貴学への入学を強く希望する。

 

※1大稔哲也「エジプトを生きるイスラーム教徒とキリスト教徒――2011エジプト「1月25日革命」までの歩み――」『紀要』13 藤女子大学キリスト教文化研究所 2012

※2大稔哲也「アラブの風――「エジプト一月二五日革命」研究の「遠近法」と「複奏化」――」『史学雑誌』121(9)公益財団法人史学会 2012

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