上智大学 文学部フランス文学科 AO入試 ブルノ・ペーロンゼミ向け

  • 議論の整理

自伝文学は作家の実体験を基に描かれるフィクションである為、一般的な小説よりも作家自身の思惟や感情を明瞭に示すといえる。ともすれば自伝文学とは日記のようなものであり、そこには高度な文学性が見られないという意見もあるが、私は現実を作品世界に取り入れているからこそ発揮される魅力があると考えている。その一つが現実の不条理と距離をおくことによって生まれるユーモアである。私たちは普段の生活の中で様々な不条理に気づかないかあるいはそれを黙認しているが、エクリチュールの体裁で描かれることでその矛盾が露わになる。その矛盾に対して糾弾するでもなく、矛盾として突き放した態度で読者に示すのが自伝文学である。いわばユーモアとは現実をどう捉えるのかという視点の問題であり、最も容赦のない現実の捉え方が自伝文学なのである。

  • 問題発見

フランスの優れた自伝文学作家のひとりにエルヴェ・ギベールがいる。病に侵される自身の生活を描いた彼の作品はシリアスなテーマを扱いながらも、作品全体を通してどこかユーモアを帯びている。ブルノ・ペーロン教授は、ギベール作品のユーモア性を彼と親交の深かったスイス人ユーモア作家のズークの作品と通じ合うものであると指摘する。両者に共通するのは比類なき心理的な繊細さで世界を正確無比に分析する視点であるという。それではギベールの細やかな感性はいかにして不条理をユーモアとして相対化しえたのだろうか。

  • 論証

ギベールにとってユーモアが現実に対する防衛反応であったことは既に論じられている。ペーロン教授は彼自身の苦悩を隠すための冷めたユーモアがしばしばアイロニーの形をとって表れていることを指摘している。この皮肉は彼の文学だけでなく、彼が撮った写真を分析することによってより深い理解が可能となる。そこで、本研究では彼の自伝文学と彼の残した写真とを包括的に分析することで、ギベールの苦悩が皮肉として相対化されるプロセスについて検討したい。

  • 結論

上記研究を行うにあたって、これまで貴学においてギベール研究者として数多くの優れた論考を執筆してきたブルノ・ペーロン教授のもとで学ぶことを強く希望する。

参考文献

ブルノ・ペーロン (2010) 「エルヴェ・ギベールにおける笑いの源泉を辿って」 『上智大学仏語・仏文学論集』 44, 99-114

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