- 議論の整理
現代の神学が抱える課題は多く残る。かつてのように神存在を信じることの出来なくなった現代人は神不在の経験をしているとアルタイザーとハミルトンは語ったが、このような状況において神学に求められているのは、神の在り方を現代の解釈に落とし込むことである。「神の死」が生きる目的の喪失を引き起こしたのならば、生きる目的を新たに設定しなければならない。その意味で、現代哲学と現代神学には通じ合うところがある。
- 問題発見
例えば、現代哲学の巨人であるレヴィナスが語った「他者論」はそのまま神学分野に応用することが可能である。それはまさに彼の師ともいうべきハイデガーの実存哲学がブルトマンの思想的基盤を強固なものにしたことと重なる。レヴィナスの定義する「他者」が無限の存在であり、「私」の理解を絶対的に拒絶しそれを超えるものだとすれば、そこに現代における神の捉え方を見ることはできないだろうか。
- 論証
レヴィナスは著書『全体性と無限』の中で「他者」を不可解で決して到達できないものとした一方で、「他者」によって「私」の自発性が審問されると論じている。そして、この審問こそが倫理を生起させると主張するが、これはまさに人々が信仰を通じて正しい生き方、自分自身の存在を問うことと同質であるとみなせる。そこで、ユダヤ人であったレヴィナスの思想の宗教的な側面について研究したいと考えている。
- 結論
この研究は、現代哲学と神学の複合領域において新しい神学の役割を見出そうとするものであり、神学の可能性を広げるものと期待している。
- 結論の吟味
上記研究を行うにあたって、貴学においてこれまで現代哲学とキリスト教への影響を研究してきたホアン・アイダル教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
ホアン・アイダル (2011) 「E・レヴィナスと存在論」 Budhi. Journal of Ideas and Culture. XV巻 1-2号, 209-225
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