上智大学 総合グローバル学部 総合グローバル学科 レポート等特定課題 2019年 小論文 解答例

■設問

あなたが現在関心を持ち、大学でさらに学びたいと考えているグローバル・イシュー(地球規模問題)を1つ取り上げ、それがどのような問題なのか説明した上で、その理解と解決のためにグローバルな視点とローカルな視点がどのように重要であるかを、具体例を挙げながら述べなさい。

 

■答案構成

議論の整理→難民問題とは何か

問題発見→グローバル・イシューと化す難民問題

論証→グローバル的視点とローカル的視点でみる難民問題

解決策or結論→難民問題解決のために何が必要か

解決策or結論の吟味→不要

 

■答案

議論の整理→難民問題とは何か

現在世界的規模で発生するグローバル・イシューは多岐に渡るが、私はその中でも「難民問題」について取り上げていきたい。難民とは対外戦争や政治的宗教的弾圧、自然災害や飢餓など自国にいることが自身の生命を脅かすためにその現状から逃れることを目的として他国へ逃げ出した人々のことを指す。難民はしばしば移民と混同されることがあるが、移民は求職や生活水準の向上、安定のために自由意思で他国へ移動する人々のことを指すため生命の危機という一点において難民とは大きく異なる。また難民は国際条約における規定が定められており、1951年に採択された難民条約のもと難民の定義と行政措置が敷かれている。

問題発見→グローバル・イシューと化す難民問題

しかし今日では戦争や迫害の悪化や、社会的経済的、または政治的に破綻した失敗国家の存在、もしくは気候や環境の変動による環境難民の増加をうけて、難民の数は爆発的に増えている。その増加を受けて各国における難民問題はグローバル・イシューと化すに至ったのである。

論証→グローバル的視点とローカル的視点でみる難民問題

では早速難民問題の課題を国際的なグローバル的視点と現地におけるローカル的視点のもと詳細にみていこう。まずグローバル的視点において近年起きた実例では2015年欧州難民危機が挙げられる。これは同年ヨーロッパ諸国に殺到した難民が前年の二倍を超え100万人規模の難民により引き起こされた社会的混乱と政治的危機を指す。この背景には難民の国内通過を禁止していたマケドニア共和国がその通過期間を考慮した三日間の入国許可を出したことや難民の多いシリアにおいて当時のアサド政権が徴兵制の強化を発表したこと、更にドイツが難民の受け入れを積極的に喧伝したことなどが考えられる。これらの要因によって増加した難民はヨーロッパ諸国に殺到するのだが、その移動においての国際的な支援の不足が現在各地において重要課題として議論されつつある。様々な経路で母国からの逃亡を図る難民の中で海路を選択する難民はボート・ピープルと呼称される。しかしその実態は非常に劣悪な船内環境のボートに収容人数を遥かに上回る難民が乗船しており、海賊との遭遇や天候の悪化、方向指示機能の不足など様々な難点が存在し、国際的支援の必要性が論じられる。事実2013年にはランペドゥーザ島難民船沈没事故と呼ばれる大規模な二度にわたる難民船沈没事故が発生し合わせて400人近い犠牲者を出した。その沈没事故の際、救助活動はランペドゥーザ島を領海内に有するマルタと当時ランペドゥーザ島に配置されていたイタリア船の援助のもと行われた。その時を振り返りマルタのジョゼフ・ムスカット首相は海路をとる難民へのヨーロッパ諸国の対応不足を問題として指摘し、当時の国際連合事務総長であった潘基文氏も事故の根本的原因の解明から難民の脆弱性や人権への対処策を含んだ将来的な未然防止の措置の実施を国際社会に要求した。また難民の受け入れに関する問題では、難民が最初に入国したところでアサイラム申請を行わなければならないとするダブリン規約が議論の中心となる。この規約は難民が目当ての国を目指して数カ国を渡り歩くことを阻止するためのもであったが、難民増加の影響を受けてその不平等性が唱えられている。たとえばこの規約では国家の位置による難民流入の可能性の差異が存在しイタリアやハンガリーなどの負担が大きいとされている。肥大化する難民において、国際的規約の見直しと数カ国に偏ることのない公平な難民の受け入れ体制が必須とされる。続いて現地におけるローカル的視点ではどうだろうか。難民を受け入れた国家ではさらにインフラ整備の増加が急がれ、また自国民の雇用機会や治療の機会が減少するなどの弊害が生じている。また文化的差異による衝突も多くみられており、難民を広く許容した国家においてその被害は著しい。スウェーデンでは2015年ストックホルムでの夏のフィスティバルにおいて難民による性的暴行事件が発生し、同様に難民の受け入れを積極的に喧伝したドイツでも同年大晦日に1000人を超えるアラブ人や北アフリカ人による大規模な性的暴行事件が発生している。この背景には宗教的文化的女性差別が存在し、難民や移民に対する具体的な措置が必要との声が高まる契機となった。このようにローカル的視点においては難民を受け入れた先の対策が必要とされ難民問題への国家規模での取り組みと国民への理解の促進が要される。更には受け入れた難民への適切な生活環境や文化的差異への指導もまた必須であろう。

解決策or結論→難民問題解決のために何が必要か

難民問題は解決に向けて多様な課題が依然として立ちはだかっているグローバル・イシューである。その解決には国際的な取り組みと国家的な対策を合わせた双方の協力体制が必要といえる。なぜならば難民というラベルを張られた人間にも文化的背景が存在し宗教や思想の自由意思が存在する。ゆえに多文化共生の観点からも難民を的確に保護し適正に分散させるグローバル的取り組みと、その逃亡先で難民の人権を認めながら他国文化と共存させるための指導体制を導入するローカル的取り組みが難民問題の根本的な解決に向けての必須条件といえよう。

 

(計2070字)

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