設問
この文章を読み、その主張をふまえたうえで、地球規模の課題への取り組みと、地域の伝統文化の維持継承の間で対立が生じている具体的な事例を一つ選び、何をめぐってどのような対立があり、その問題について、あなたはどのように考えるかを800字程度で述べなさい。なお、あなたの考えが、以下の文章の主張と異なるものであってもよい。
議論の整理→捕鯨は生活権として認められるべき
筆者は、捕鯨は西洋文化から見ると動物権や動物福祉などの動物愛護精神に反するものとなるが、一方で西日本を中心に発展してきた文化であり文化である、と述べる。そのため、鯨肉を消費することは生活権として認められるべきであると主張している。
問題発見→伝統文化と性差別
捕鯨問題のほかにも、伝統文化と地球規模での課題取り組みの対立の例として挙げられるのが、伝統芸能と性差別の問題である。たとえば日本の歌舞伎では男性のみが舞台に上がることができ、女性役も女形と呼ばれる男性が演じる。女性は舞台にあがることはできず、歌舞伎役者の一家に生まれた女性はたとえ本人が望んでも別の道を歩むしかない。これは、男女雇用機会均等法から見ると違反になるのではないか。また世界的にも、性別で雇用機会を制限することは許されないが、どのように考えるべきだろうか。
論証→伝統文化の保護と男女雇用機会均等法
私は、歌舞伎や相撲などの伝統芸能については、文化を継承するという観点から必要である場合に、男女間で雇用の差を設けるのは妥当だと考える。西洋を中心とした社会では、男性も女性も同様に就労の機会を得るべきであり、性別を理由に就労を断ると差別と認定される。男女の雇用機会を均等にすることに対して、まったく異論はない。むしろ最近は、性的マイノリテの存在に配慮して、就職面接の際に性別を聞かない国も増えてきた。持って生まれた性が理由で、個人の生きる社会が制限されることは、あってはならない。
しかし他方で、伝統芸能の保存の場合は別である。男女雇用機会均等法でも「芸術や芸能の分野における表現の真実性など」の理由で、性別を限って雇用してよいと認められている。
解決策or結論→伝統を保護するという目的では、性別差を設けることは妥当である
17世紀から続く形での歌舞伎を保護するという目的においては、性別による雇用制限は設けてしかるべきである。
解決策or結論の吟味→結論を吟味する
このように、一つの価値観から批判するのではなく、多様な視点から考えることが、結果的に豊かな世界を創ることにつながるのではないだろうか。(787字)
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