2019年 上智大学外国人入学試験 文学部・新聞学科 小論文 解答例

議論の整理……

権威とは、かつては目に見えるものであった。例えば、優れた専門性を持っている人、権力がある政治家、経済を動かせる経営者などが、権威として位置づけられていた。そのため、世の中がどのような権威により動かされているのか、国民はある程度理解することができた。しかしながら近年は、どのような人が権威なのか、世の中を動かしているのは誰なのか、見えなくなってきている。その理由として、私はメディアが権威を代行するようになったからであると考えている。

問題発見……

たとえばテレビでは、ある専門家が「権威」として紹介され、専門的な立場から解説することはよくある。しかしながらその専門家は、本当の意味でも権威としての力を持っていない。

論証……

なぜならその専門家は、真の権力者の立場を代弁するために、視聴者の前に登場しているだけだからである。人前に出す専門家を、真の権力者が選んでいることもあれば、テレビ制作側が「そんたく」して、選んでいることもあるだろう。そのため本当の権威は、私たちの目には見えない存在となっている。

さらに権威が見えにくくなっている要因として、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の浸透も挙げられる。SNSが発達することにより不特定多数の人々の意見が広まるようになった。SNSの特徴は、「炎上」という表現から分かるように、何かをきっかけに爆発的に拡散される。たとえ、その意見が不当なものであっても、炎上することは不名誉なことである。

結論……

そのため、匿名の少数派が「権威」として、ものごとの方向性を決定してしまうこともあるのだ。

吟味……

このような状況から、現在は権威が正しく機能しにくくなっている。見えない権威に対して、メディアや企業がそんたくし、主体的に動けなくなっているように思える。その結果、必要な出来事が報道されない、経済を動かす大きなチャレンジができない、一部の人が不当に排除されるなど、仮想の権威に振り回されているのが現在なのだ。ただ、権威というものは、目に見えないだけで明らかに存在する。そのため私たちは、メディアやSNSの背後にある、本当の権威を見抜く力が求められている。(871文字)

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