議論の整理……
ここで引用されている法第18条は、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合、有期契約労働者の申し込みにより、期間の定めのない労働契約に転換できるというものである。この法令により、雇用が不安定な契約社員を、期間の定めがない労働者にすることで、労働環境を改善することを狙った。しかしながら②の論説が説明しているように、期間の定めがない労働者とすることでコストが増えるため、結果として「雇止め」が多発することになった。つまり、労働者の雇用を安定させようと法改正したところ、さらに不安定になったことが問題視されている。
問題発見……
私は、法第18条は、本当に労働者の雇用を安定させようとするものなのか、疑問を感じる。
論証……
その理由は「有期契約労働者の申し込みにより」と、あえて書いている点だ。現在の会社組織では、雇い主と雇用者を比較すると、明らかに雇い主のほうが力は強い。雇用者が、期間の定めのない労働者になることを自ら申し出ることは困難だ。また、申し出ることを防ぐために、雇用する段階で「更新しない」と書いてしまえば、申し出られることはなくなる。
結論……
法改正を検討する時点で、関係する専門家の意見を必ず聞いている。そのため、会社のコストの問題などは、十分に認識していたはずだ。そのため②が指摘する「雇止め」が多発することも想定していたと考える。
吟味……
法第18条は、「有期契約労働者の申し込みにより」という、日本の会社組織の力関係にマッチしない書き方をすることで、あえて抜け道を作ったように思える。法律は、一見すると絶対的な存在のように見える。しかし、それは文章で定義しているに過ぎないので、解釈を加えたり抜け道を見つけたりすることが簡単にできてしまう。このような理不尽さを減らしていくのは、判例の積み重ねしかない。しかし「雇止め」の問題は、状況を一転させるようなインパクトがある判例はほとんどないと言っていい。それゆえ、判例により解釈が変わる不安定な存在だという認識のこと、法律と向き合うことが大切なのである。(835文字)
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