上智大学 総合グローバル学部 特別入試 志望理由書 提出例(稲葉奈々子ゼミ向け)

■ 議論の整理
日本において移住者の数は年々増加傾向にあるが、社会統合のための政策が伴わないため、グローバルな分業体制構造の下、移住後の実態は極めて厳しい 。社会統合政策とは「経済的社会的な平等が実現され、労働市場や社会生活へ の参加が可能とされ、かつ文化的差異を理由と する排除や隔離がなされないこと」※1を指し、同化政策とは区別される。
■ 問題発見
特に社会的・経済的に不安定な地位に置かれやすい移住女性のための施策は急務である。中でも2009年の改正国籍法施行を機に、生後に日本人父から認知されて日本国籍を取得し、来日したジャパニーズ・フィリピノ・チルドレン(JFC)とその母親の生活や就労、教育の実態は深刻であり、日本政府に対して改善対応を訴えていく必要がある。

■ 論証
稲葉らの調査によると、JFCの母親は、定住資格はあっても劣位で不安定な環境に置かれている※2。第一に、渡航の手続き代行や費用の貸付を行う斡旋業者により職業を管理され、パスポートまで管理されるケースもある。第二に、母親は子どもの養育目的で定住資格を得ているため、子どもの成人とともに滞在資格を失うことになる。第三に、来日によってフィリピンの家族と別離を余儀なくされ、また日本人父親とは離婚しているため、地縁・血縁といった社会関係資本を築きにくい。第四に、来日時に15歳以上のJFCは中学校の編入許可が下りず、日本語習得も高校受験も自力でサポーターを探して行うしかない。あるいは日本語が不要な非正規の職を探すことになるため、親子ともに底辺層に固定化されやすい。
定住資格を付与するだけではなく、統合政策の必要性を喚起するには、長期的な視野に立ち、親子の実態を追う必要がある。
■ 結論
調査にあたっては、支援ネットワークと連携し、統計学的調査による全体像の把握と、ライフストーリーインタビューによる個別実態把握の両面からのアプローチが有効である。また、第一のような搾取的な状況は諸外国では「人身売買」として警告の対象となることもあり※2、移民政策の歴史のある国の対応事例を参照しつつ、政府に対する対応喚起に繋げることも重要である。

■ 結論の吟味
上記の問題意識を追求するために、移住者の実態をジェンダーの視点を踏まえてつぶさに研究し、積極的に政策提言に繋げてきた稲葉奈々子教授のもとで、社会学的調査の視点と方法論を学びたいと強く希望する。

※1 宮島喬(2017) 特集2 現代社会における分断と新たな連帯の可能性ー階層・世代・民族・情報の視点からー 「移民・外国人の社会統合の社会学」 学術の動向 22巻10号p10₋78-10₋83

※2 特定非営利活動法人JFCネットワーク(2014) 「改正国政法施行以後のジャパニーズ・フィリピノ・チルドレンの来日と就労の課題」 2013 年度パルシステム東京市民活動助成調査報告書(改訂版)

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