上智大学 総合グローバル学部 特別入試 志望理由書 提出例(福武慎太郎ゼミ向け)

■ 議論の整理
東ティモールのポルトガルやインドネシアによる統治と分離独立、その後の国際連合による独立支援の過程では、紛争状態から抜け出し、平和的国家建設と国民生活の安定は急務である。そのプロセスは国連のイニシアチブのもと、マクロな視点や新たな独立国の国民統合として語られることも多いが、国の担い手である住民の側が主体として語られることは少ない。

■ 問題発見
しかし、そのようなマクロな語りにおいては、東ティモールの分離独立から未来へのプロセスにおいて住民の文化やアイデンティティが重層的に生成されていく様子を見落としてしまう恐れがある。例えば、福武(2008)※1は1997年に実施された独立派と反独立派の和解儀礼が失敗した場面で、人々がそれを「儀礼の手順を間違えたため」と説明する背景を分析し、儀礼的権威の世俗権力に対する優位性があることを指摘する。こうした土着文化の儀礼に根差した知のあり方は、解決困難な対立を超越して暴力を排し、多民族共生社会の構築や紛争の平和的転換のために再評価されるべきではないだろうか。

■ 論証
従来のマクロな政策においては、こうした儀礼的世界観はグローバルな規範と対立するものとして、切り捨てられてきた。また、インドネシア政府統治下においては「多様性の統一」という国是のもと、政治性が切り離された伝統文化のみに焦点が当てられてきた。住民の文化的アイデンティティの拠り所となる儀礼的世界観を再評価するにあたっては、グローバルな規範とのズレや乖離に焦点を当てるのではなく、東ティモールの内側から、人々の重層的な知の体系を記述していく、文化人類学的な作業が必要だと私は考える。

■ 結論
そこで私も、ポルトガルやインドネシアによる統治、紛争と暴力を経験してきた東ティモールの人々が、様々な規範や価値観を重層的に取り入れ、紛争や平和についてどのように語り、アイデンティティとして生成していくのかに注目していきたい。

■ 結論の吟味
そのために、多様な分野から多文化共生についての知見を深められる上智大学は、私にとっては最適な学習環境である。中でも、東ティモールをはじめ、様々な地域で内側の視点や文化を記述し、少数派の文化に対する偏見のまなざしを払しょくすることにも貢献してきた福武慎太郎教授のもとで、多様性や平和構築に資する文化人類学的知見や手法を学ぶことを強く希望する。

※1 福武慎太郎(2008)「国民和解にみる儀礼の流用 東ティモール受容真実和解委員会の活動を事例に」日本文化人類学会第42回研究大会 平和の人類学分科会報告

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