■ 議論の整理
2014年には日本創生会議が「自治体消滅論」を発表し、全国の自治体の約半数が「消滅可能性都市」であるというレポートが話題となった。「自治体消滅論」に限らず、人口減少やそれに伴うコミュニティの衰退と対策に関する議論は、主に就業可能な年齢層の人口比率、インフラ整備や利便性、就業の場の有無、子育て支援や福祉の政策などを指標として語られる。また、被災地において目指すべき復興も同様の視点で語られるが、一方で被災者に残る住民の実態やインタビューからは、それとは異なるコミュニティの在り方が浮かび上がってくる。
■ 問題発見
消滅危機にある村落や被災地での調査を通して、植田※1は、コミュニティにおいて儀礼が果たす役割の重要性を示唆している。2004年の中越地震で甚大な被害を受けた山古志村において、被災によって未来の見通しが立たない「直線的な時間」の中に投げ込まれた人々が、厳しい状況の中でも毎年繰り返されてきた「角突き」の儀礼を執り行うことで「回帰的時間」を取り戻していく様子が報告されている。
■ 論証
こうしたコミュニティの儀礼はコミュニティの衰退や再建の議論からはこぼれ落ち、現代社会を生きる上では優先順位が低いとされてきたが、同時にコミュニティとそこに住む人々の生活を語る上で抜かせない根源的な役割を担っているといえるのではないだろうか。また、住民の生活文化に深く根差したコミュニティ意識は、日本のコミュニティ再建にとって貴重な示唆を与えてくれるにも拘わらず、国や自治体が作ったアンケート調査では掘り下げることが難しい。そのため、文化人類学的な参与観察やライフストーリーインタビューによる調査が有効であると考える。
■ 結論
上記の問題意識の追及を通して、儀礼をいずれ消滅する過去の遺物としてではなく、コミュニティの画一化が急速に進行する日本において、人と地域の関りを絶えず刷新していくコミュニティの機能として捉えなおしたい。
■ 結論の吟味
上智大学のローカルな実践とグローバルな視野が相互に作用しあう学習環境は、私にとって最適な環境であると確信している。中でも、限界集落や被災地の村落研究を通してこの問題を問い直し発信し続けてきた植田京子教授ゼミへの入会を強く希望する。
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