■ 設問
1. 最近読んだ福祉関係の本について,その本の題名とともにその内容,そして著者の見解についてどのように感じたか,自分の考えを述べなさい(600字以内)。
2. 次の問についてそれぞれ論述しなさい。
(1) 社会保障や社会福祉には財源が必要です。最近議論されている社会保障,社会福祉の財源についてどのような議論がなされているかについて説明するとともに,どのようにして社会保障や社会福祉の充実が図れるようにすべきかあなたの意見を述べなさい。(600字以内)
(2) 先進諸国で格差社会について議論されることが多くなっています。このような格差社会について説明し,意見を述べるとともに,社会福祉やソーシャルワーカーが果たせる役割について論じなさい。(600字以内)
■ 設問1
■ 答案構成
議論の整理→ 『子どもの貧困連鎖』を断ち切る抜本策は,学力向上による学歴取得
問題発見→ 学力向上の術とは?
論証→ 経済的支援策が学力向上におよぼす効果
解決策or結論→ 学力向上プログラムの策定と実践
解決策or結論の吟味→ 学校への期待
■ 答案
議論の整理→ 『子どもの貧困連鎖』を断ち切る抜本策は,学力向上による学歴取得
『子どもの貧困連鎖』(保坂渉 他)を題材に,自論を述べる。貧困世帯の子どもは大人になっても貧困から抜け出せず,彼らが親になり子どもを持ってもその子どもの世代にも親の貧困が引き継がれる。これが貧困の連鎖である。この連鎖をいかに断ち切るか。それには,貧困世帯の子どもたちの学力を上げて高学歴を達成させ就労力を向上させることで,貧困世帯の子どもを正規雇用職に就労させる社会的しくみを構築すべきである。親の学歴が世帯の貧困率に関係していることから,子どもに学歴をつけて就労機会を改善し所得を上げることが,この連鎖を断ち切る最善策である。
問題発見→ 学力向上の術とは?
しかし,家庭の貧困が改善されれば,自発的に子どもの学習環境が整って自然に学習習慣が身につき学力が向上するだろうか。
論証→ 経済的支援策が学力向上におよぼす効果
もちろん,安定した生活基盤を築くための経済的支援策が貧困問題解決の主軸である。しかし現在の経済支援策は就学機会の改善には役立つものの,学力向上には寄与しない。学力が向上しなければ進学もままならず,結局貧困の連鎖は解消できないのである。
解決策or結論→ 学力向上プログラムの策定と実践
学力を向上させるためには,学校主導で学習支援プログラムを発動し,学習環境の改善や学習機会の提供に教育資源を集中投入すべきである。放課後や中長期休暇中でも学習意欲のある貧困世帯の子どもの支援ニーズに常に応えられるようなネットワークの構築が望まれる。
解決策or結論の吟味→ 学校への期待
その中心的役割を担うのが学校のあるべき姿だと考える。
『子どもの貧困連鎖』(保坂渉 他)を題材に,自論を述べる。貧困世帯の子どもは大人になっても貧困から抜け出せず,彼らが親になり子どもを持ってもその子どもの世代にも親の貧困が引き継がれる。これが貧困の連鎖である。この連鎖をいかに断ち切るか。それには,貧困世帯の子どもたちの学力を上げて高学歴を達成させ就労力を向上させることで,貧困世帯の子どもを正規雇用職に就労させる社会的しくみを構築すべきである。親の学歴が世帯の貧困率に関係していることから,子どもに学歴をつけて就労機会を改善し所得を上げることが,この連鎖を断ち切る最善策である。
しかし,家庭の貧困が改善されれば,自発的に子どもの学習環境が整って自然に学習習慣が身につき学力が向上するだろうか。
もちろん,安定した生活基盤を築くための経済的支援策が貧困問題解決の主軸である。しかし現在の経済支援策は就学機会の改善には役立つものの,学力向上には寄与しない。学力が向上しなければ進学もままならず,結局貧困の連鎖は解消できないのである。
学力を向上させるためには,学校主導で学習支援プログラムを発動し,学習環境の改善や学習機会の提供に教育資源を集中投入すべきである。放課後や中長期休暇中でも学習意欲のある貧困世帯の子どもの支援ニーズに常に応えられるようなネットワークの構築が望まれる。
その中心的役割を担うのが学校のあるべき姿だと考える。(586字)
■ 設問2(1)
■ 答案構成
議論の整理→ 社会保障給付費と社会保険料収入の差が年々拡大し,財政を逼迫している
問題発見→ 財政破綻を回避しながら社会保障制度を充実させる策とは?
論証→ 給付額を最適化し,安定化財源としての税収を増やす
解決策or結論→ 給付金に資産連動性を取り入れるとともに,社会保障目的税を導入する
解決策or結論の吟味→ 「企業は社会の公器」である
■ 答案
議論の整理→ 社会保障給付費と社会保険料収入の差が年々拡大し,財政を逼迫している
日本の社会保障制度は,社会保険方式を採用しつつも,社会保障給付費と社会保険料収入との差額を国と地方の負担により賄っている。その財源は借金に依存しており,これが財政赤字の主要因となっている。さらには,高齢化社会の急進により,社会保障給付費は年々増大する一方,社会保険料収入の伸びは鈍い。国の負担は毎年1兆円規模で増加していることから,このままでは将来,財政が逼迫し社会保障制度の維持が困難となるのは自明である。そこで,消費税率を上げて社会保障の安定化財源とし,同時に財政健全化を図るという「社会保障と税の一体改革」が打ち出された。
問題発見→ 財政破綻を回避しながら社会保障制度を充実させる策とは?
それでは,財政の健全性を保ちつつ社会保障制度を充実させるためにはどうすべきか。
論証→ 給付額を最適化し,安定化財源としての税収を増やす
それにはまず,社会保障を受けなくとも自活できる人を給付対象から除外することで支出を抑える。さらには,財源不足は税収で補うしかない以上,社会保障を目的とする税収を増やして財源に充足する。
解決策or結論→ 給付金に資産連動性を取り入れるとともに,社会保障目的税を導入する
具体的には,資産保有額に応じて社会保障給付金を増減させる連動性を制度化し,同時に社会保障目的税として新たな法人税を課税する政策を提案したい。
解決策or結論の吟味→ 「企業は社会の公器」である
保障を必要とする人に過不足なく保障を提供する「社会保障の本来の姿」に回帰することに異論はあるまい。そして相応の利益をあげた法人には納税という形で社会に利益を還元させるべきである。税率を多段階化することで,利益に応じて納税させればよい。「企業は社会の公器」である。
日本の社会保障制度は,社会保険方式を採用しつつも,社会保障給付費と社会保険料収入との差額を国と地方の負担により賄っている。その財源は借金に依存しており,これが財政赤字の主要因となっている。さらには,高齢化社会の急進により,社会保障給付費は年々増大する一方,社会保険料収入の伸びは鈍い。国の負担は毎年1兆円規模で増加していることから,このままでは将来,財政が逼迫し社会保障制度の維持が困難となるのは自明である。そこで,消費税率を上げて社会保障の安定化財源とし,同時に財政健全化を図るという「社会保障と税の一体改革」が打ち出された。
それでは,財政の健全性を保ちつつ社会保障制度を充実させるためにはどうすべきか。
それにはまず,社会保障を受けなくとも自活できる人を給付対象から除外することで支出を抑える。さらには,財源不足は税収で補うしかない以上,社会保障を目的とする税収を増やして財源に充足する。
具体的には,資産保有額に応じて社会保障給付金を増減させる連動性を制度化し,同時に社会保障目的税として新たな法人税を課税する政策を提案したい。
保障を必要とする人に過不足なく保障を提供する「社会保障の本来の姿」に回帰することに異論はあるまい。そして相応の利益をあげた法人には納税という形で社会に利益を還元させるべきである。税率を多段階化することで,利益に応じて納税させればよい。「企業は社会の公器」である。(596字)
■ 設問2(2)
■ 答案構成
議論の整理→ 格差社会の定義
問題発見→ 格差の放置は社会の歪みを生む
論証→ 貧困層の増大,相対的貧困率の上昇
解決策or結論→ 公的福祉サービスを必要とする世帯を見逃さない取り組み
解決策or結論の吟味→ 学校教育は未来への投資である
■ 答案
議論の整理→ 格差社会の定義
先進国で議論の対象となる「格差社会」とは,収入や財産の多寡による富裕層と貧困層の両極化,ならびに世代を超えた階層の固定化が進んだ社会をいう。格差をこのまま放置すれば,すでに構造化された格差は固定化しさらに拡大する。先進国のほとんどがこの悪循環に陥っている。
問題発見→ 格差の放置は社会の歪みを生む
階層が固定化された社会には,世代を超えた歪みが残る。しかもその歪みは不可逆的である。つまり,親の経済状態が子どもの教育機会に影響を与え,受けた教育が高ければより好条件な就業機会を得ることから,格差は世代を超えて継承される。これでは将来への期待が持てず,社会の活力を奪う。
論証→ 貧困層の増大,相対的貧困率の上昇
OECD(経済協力開発機構)のまとめによれば,日本の相対貧困率は2015年時点で15.6%であり,これはG7の中でも米国に次いでワースト2位である。
解決策or結論→ 公的福祉サービスを必要とする世帯を見逃さない取り組み
格差社会の撲滅に向けて社会福祉に最も期待したいのは,中低所得世帯の全学童を対象とする学校教育完全無償化に尽きる。そして,ソーシャルワーカーが担うべき重要な役割とは,担当地域の全住民が収入や財産の多寡によらず安心安全に暮らせるようアンテナを張り巡らし,学童支援や生活保護などの公的社会福祉サービスが生活維持に不可欠な貧困世帯の「静かな悲鳴」を見逃さない草の根レベルのケアである。
解決策or結論の吟味→ 学校教育は未来への投資である
「学校教育は未来への投資」という位置づけで,社会福祉の観点から学校教育制度を見直すべきだと考える。特に貧困の連鎖を断ち切るためには学校教育の無償化拡大がカギを握る。
先進国で議論の対象となる「格差社会」とは,収入や財産の多寡による富裕層と貧困層の両極化,ならびに世代を超えた階層の固定化が進んだ社会をいう。格差をこのまま放置すれば,すでに構造化された格差は固定化しさらに拡大する。先進国のほとんどがこの悪循環に陥っている。
階層が固定化された社会には,世代を超えた歪みが残る。しかもその歪みは不可逆的である。つまり,親の経済状態が子どもの教育機会に影響を与え,受けた教育が高ければより好条件な就業機会を得ることから,格差は世代を超えて継承される。これでは将来への期待が持てず,社会の活力を奪う。
OECD(経済協力開発機構)のまとめによれば,日本の相対貧困率は2015年時点で15.6%であり,これはG7の中でも米国に次いでワースト2位である。
格差社会の撲滅に向けて社会福祉に最も期待したいのは,中低所得世帯の全学童を対象とする学校教育完全無償化に尽きる。そして,ソーシャルワーカーが担うべき重要な役割とは,担当地域の全住民が収入や財産の多寡によらず安心安全に暮らせるようアンテナを張り巡らし,学童支援や生活保護などの公的社会福祉サービスが生活維持に不可欠な貧困世帯の「静かな悲鳴」を見逃さない草の根レベルのケアである。
「学校教育は未来への投資」という位置づけで,社会福祉の観点から学校教育制度を見直すべきだと考える。特に貧困の連鎖を断ち切るためには学校教育の無償化拡大がカギを握る。(597字)
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