上智大学 経済学部 特別入試 志望理由書 提出例(蓬田守弘ゼミ向け)

■ 議論の整理

私は、国際経済における貿易紛争解決の方法とプロセスに関心があり、その解決のための相殺関税に注目したい。ある輸入品に関して貿易相手国の政府が補助金を与えている場合、国内産業を保護するために、相手国の補助金を相殺するための割増関税、すなわち相殺関税を設定することが WTOで認められている。近年の貿易紛争は農産物から太陽電池などの環境関連物品や、国際的な分業体制による通信機器など、より複雑化しているため、そのルールや解決のための根拠の明確化のための研究や分析も急がれている。

■ 問題発見

2008年の金融危機以降、アメリカの太陽電池生産は、低コストの中国産太陽電池に敗れ、倒産あるいは経営危機に陥った。2012年、米国は補助金を受けて生産されている中国製太陽電池に相殺関税を課すことを決定したことから、米中における貿易紛争が深刻化した。

環境関連物品に関する貿易摩擦の難しいところは、中国政府の補助金が米国の太陽電池普及を促すことで温室効果ガス排出削減による環境改善をもたらすが、米国の相殺関税はこうした環境改善を損なう効果があるともとれるからである※1。

■ 論証

この「環境改善の外部性」のある財と、それを伴わない財では、相殺関税の発動や抑制についてのルールを整理すればよいのだろうか。また、相殺関税の発動を認め、紛争調停に携わるWTOにおいて、どのような補助金・相殺関税ルールが公平性を担保し、また両国全体の経済厚生の観点からも望ましいのだろうか。

■ 結論

この問いに応えるために、私は理論経済学の観点から、このような不完全競争の状況で、かつ環境改善の便益生じる事例について分析するためのモデルを学び、国際経済貿易紛争の問題解決の一助となりたいと考える。

■ 結論の吟味

上記の目的のため、私は貴学の経済学部に進学し、この分野での先進的な研究成果を積み上げている蓬田守弘教授のゼミに入会することを希望する。

 

※1 蓬田守弘. (2015). 環境関連物品への相殺関税− WTO ルールへの政策的示唆−.

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