■ 議論の整理
2013年秋、EUとの連合協定調印作業を見送ったヤヌコヴィッチ政権に対する抗議とデモに端を発するウクライナ危機は、ロシアによるクリミア併合、また新ロシア派勢力のウクライナ東部への軍事介入によって混迷し、終結の気配を見せることなく、戦闘により多くの犠牲者を出し現在に至っている。二つの世界大戦期の国際関係から、冷戦期の両陣営の狭間で複雑な歴史を歩んできたウクライナは、複雑に絡み合った対立の要因を解きほぐし、和平へ向かうことができるのだろうか。
■ 問題発見
このような複雑な歴史を持つ紛争に対し、国際秩序は紛争解決のための協議の場を作り、調停者としての役割を果たせるだろうか。欧州安全保障協力機構=OSCEは1972年に発足した全欧安全保障協力会議が、冷戦終結後に紛争防止とその解決へ向けた新機構として、1995年に現在の名称に変更した国際機関である。旧ソ連諸国を含めた、拡大ヨーロッパともいうべきこの機構に、紛争解決と和平の協議の場として、またその立役者としての役割が期待されている。
■ 論証
OSCEは当初はこの紛争解決に対してうまく機能しなかった。しかし湯浅教授は、このような地域機構の存在による紛争解決の努力があることが、100年前の二度の世界大戦を引き起こした列強のパワーポリティクスに歯止めをかけられなかった不完全な国際的な集団安全保障体制しか存在していなかった時代とは異なる環境下にあることを示していると評価している※。
■ 結論
OSCEの動向を見守ることは、ウクライナ問題の解決のみならず、これからの国際秩序と集団安全保障に関して、地域機構が果たすべき役割と方法論についての重要な示唆を提示するだろう。私はロシア文化圏の政治と、国際的な紛争解決と和平への動きに関心があり、ロシア語に磨きをかけ、この動向をリアルタイムで見守り、分析していきたい。
■ 結論の吟味
ロシアと東欧諸国の歴史と現在から国際社会の動向を捉えていくために、貴学の湯浅剛教授のゼミに入会することを強く希望する。
湯浅剛(2016)グローバル政治の焦点としてのウクライナ紛争ー国家性・地域機構・地政学
Hiroshima Peace Research Journal, Volume3
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