■ 議論の整理
20世紀初頭、新天地を求めてブラジルに移住した日本人がはじめてブラジルの地を踏んでから1世紀以上が経過、今ではその子孫が日本に逆移民する時代となった。私は移民の文化史、特に移民が新天地と祖国との間でどのようにアイデンティティを築き上げてきたかということに関心がある。
■ 問題発見
移民を押し出す日本側の要因や期待と、奴隷制廃止により奴隷に代わる開拓労働者を外国移民に求めたブラジル政府の期待とのすれ違い、異国での過酷な労働の中、移民は何を思いながらブラジル社会の中で生き抜き、現在の地位や移民の文化を築いてきたのか。故郷への思いを胸に秘めつつ、異文化を受容し折り合いをつけていく過程はいかなるものだったのだろうか。公文書等からは見えてこない移民の姿や心情を知るためには、どのようなアプローチがあるのだろうか。
■ 論証
私はそれらを芸術や文学の領域から考えてみたい。移民や奴隷労働者の声が芸術に昇華されたジャンルと言えば、アフリカ系アメリカ人のブルースなどが著名である。ブラジル移民の場合は、移民文学として一ジャンルを築いた俳句の存在が大きい。日本とは気候も風土も全く異なるブラジルの地では、通常の季語とのズレなど、様々な相違もある。その文化の狭間で移民が詠んだ俳句の数々を通して、17文字という枠組みの中で、ブラジル移民がどのように祖国との関係を切り結ぼうとしてきたのかを見ていきたい。
■ 結論
私はジェンダーと文学にも関心があるため、特に移民女性の語りに注目した研究を行いたい。女性移民の移民俳句を見ていくと共に、ブラジル移民社会の過去 から現在のあり方を知るために、ブラジルにおける 移民2世3世の女性へのインタビュー調査も行いたい。
■ 結論の吟味
上記の研究を行うために、貴学のポルトガル語学科のトイダエレナ教授のゼミに入会し、移民文学を通してブラジル社会やグローバル社会について学ぶことを強く希望する。
※トイダ,エレナ・ヒサコ(2007) 南十字性の下で:俳句に見るブラジル移民の姿. Encontros Lusófonos, (9), 13-23.
コメントを残す