■ 議論の整理・・・
「コミュニティバス」は,一般に従来の事業者主体のバス事業と性格を異にし,主に市町村が主体的に関わり運行されるバスサービスを意味する場合が多い。ただ,「コミュニティバス」の実際の運行は,バス運行の技術やノウハウを有する民間事業者に運行を依頼するケースが多く,市町村廃止代替バスのような場合のみ市町村自らが運行を行うのが現状である。また,今日全国に広がった「コミュニティバス」の先駆的役割を果たしたのが,1995年11月に東京武蔵野市に登場した「ムーバス」である。すでに色々な所で紹介されているように,運行を始めるまでの周到な準備・事前調査と利用者の本音の要望を積極的に取り入れたことで,魅力あるバスづくりに成功したと言える。全国に与えた「ムーバス」効果は非常に大きいといえよう。
■ 問題発見・・・
では,武蔵野市で始まった「コミュニティバス」は,どのように波及していったのか。
■ 論証・・・
「コミュニティバス」は,独自に検討・協議を重ねていった武蔵野市ムーバスの成功によって,新たな交通システムとして全国に広がっていった。自治体間の波及においては,横並び意識を背景とした政治的な要因も導入のきっかけとなり,中でも近隣自治体を中心に波及しやすいという傾向が見られる。その理由は,認知度が高く住民や議員による要望が起こりやすいこと,行政が近隣自治体の事例を中心に参照する傾向があることの2点が挙げられる(*1)。しかし具体的な検討過程では,それぞれの地域環境の差異を認識したオーダーメイドによる検討が必要で,他自治体の相互参照は,検討のノウハウが中心となる。また,道路運送法の改正による規制緩和を背景に事業者との関係にも変化が見られ,特に自治体は調査・企画で方向性を示しつつも運行補助はなく,沿道の環境整備といった間接的な支援に特化する事例が増える傾向にある。このように「コミュニティバス」の波及は,地域の問題を自律的に解決しようとした自治体によってなされ,その取り組みは,民間バス事業者との役割分担にも新たな枠組みをもたらしたと言える(*1)。
■ 結論・・・
そこで,「コミュニティバス」と同様に全国に広がっている「児童見守りシステム」の取り組みについて,研究したいと考えている。
■ 結論の吟味・・・
この研究を進めるために最適な環境を求めて,貴学SFCに入学し,データ分析に基づく地方自治に関する研究を専門としている片岡正昭教授の研究会に入会することを強く希望する。
(*1) 横山大輔,片岡正昭.“コミュニティバスの導入プロセスと自治体間波及に関する考察 東京近郊の事例より”, 都市計画論文集, Vol.38-3, pp.481-486, 2003
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