■ 議論の整理・・・
2000年前後から「国家戦略」という言葉の使用頻度が急増し,それと並行してわが国の統治機構が戦後初めて大再編された。1998年に中央省庁等改革基本法が,1999年に中央省庁等改革関連法がそれぞれ制定され, 2001年1月には新府省が発足し,同年4月には行政の実施部門が独立行政法人となった。これは,「この国のかたち」の再構築を目論んだ,政治主導による国家戦略策定を可能にするための統治機構改革であった。特に, 内閣府は,内閣主導による国政運営を下支えする行政機関として機能するよう,新たに企画立案能力,政策総合調整力が付与された。さらに内閣府には,「重要政策に関する会議」として経済財政諮問会議が設置され,「行政の縦割りの論理」を排除しつつ政治主導で国家戦略を立案する体制が形成された。
■ 問題発見・・・
この時期,国家戦略として取り組むべき重要課題に直面していたからにほかならない。それは,第一に福祉国家的統治から新自由主義的統治への形態転換をはかること,第二にグローバル経済下の競争優位を確保するための新自由主義的改革および産業構造転換を推進することであった。
■ 論証・・・
1990年代以降,日本を含む先進各国では新自由主義が政府の重要政策の基調となった。競争優位の確保を目論む各国のグローバル企業は,自国の政府に対し,統治コストの削減や国際競争力強化に資する経済・産業・通商基盤の整備を求めている(そもそも福祉国家的統治は,資本主義的市場が生み出した矛盾を膨大な財政支出によって市場の外で解決しようという,高コストの統治形態である)。わが国においても,経済財政諮問会議で策定された国家戦略は新自由主義的国家改革を企図するものとなっている。しかしながら,毎年発表されるわが国の国際競争力相対評価は,期待どおりに改善されないのが現状である。これは,現行の統治機構にまだほころびがあるためと推定される。
■ 結論・・・
そこで,統治機構研究を専門とする貴学総合政策学部の松井孝治教授に師事し,現在の統治機構の真の課題を整理したうえで,より現実的かつ実践的な政策提言を取りまとめたいと考えている。
■ 結論の吟味・・・
その取り組みを進めるための最適な環境は,長年官僚・政治家として実際に行政や政治に関わり,「様々な統治機構の中に身を置く中で得た経験」をお持ちの松井孝治教授率いる「統治機構研究会」をおいて他にはない。よって貴学SFCに入学し,同研究会に入会することを強く希望する。
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