慶應SFC 環境情報学部 AO入試 志望理由書 提出例(川島英之研究会向け)

■ 議論の整理・・・

デジタル情報社会の進展にともない,人類が扱うデータ量は増加の一途を辿っている。データベースとして広く利用されるデータベース管理システム(DBMS)は長らく,SQLクエリ処理とトランザクション処理の2つの要素で構成されてきた。ところが近年クラウドコンピューティングが普及してスケールアウト型アーキテクチャが広まると,データベースアーキテクチャにおいても分散処理指向が強まり,分散データベース管理システム(分散DBMS)が主流となった。分散DBMSは,複数ノードでデータを分割管理することでスケーラビリティや耐障害性を担保できる反面,複数ノードにまたがるトランザクション処理は高負荷となるため高性能化が重要課題となっている(*1)。また,データ保護はデータベースの命綱であるが,記憶媒体には寿命があるため,データ複製(レプリケーション)がサービサビリティを保証するコアである。しかし,Consistency(一貫性),Availability(可用性),Partition-tolerance(分断耐性)の3要素のうち同時には2つまでしか満たすことができないという「CAP定理」が示すとおり,技術的困難さを伴う(*1)

 

■ 問題発見・・・

データ自体は単なる時系列の数値の羅列であって,データを加工・分析して目的とする現象を抽出する技術が今後益々重要になるだろう。

 

■ 論証・・・

特に近年ではICT技術の進歩により,ものづくりの現場でIoTやビッグデータ活用の取り組みが進んでいる。機械学習や時系列解析を利用して,取得したデータから新しい知見を獲得し,製造プロセスの改善につなげたり,新製品や新サービスの開発に応用したりと,ビジネスチャンスに活かす事例が増えている。膨大な量のデータが収集できるようになれば,トランザクション処理を含むデータベースシステム技術はその重要性をさらに増すことになる。

 

■ 結論・・・

そこで,博士論文(*2)以来一貫してデータベースシステムを専門に研究している貴学環境情報学部の川島英之准教授に師事し,分散トランザクション処理を高速化かつ高性能化することによりアプリケーションを効率的かつ堅牢的に運用できるデータ環境を構築したいと考えている。

 

■ 結論の吟味・・・

貴学の川島英之准教授はRDMA(remote direct memory access)という高速通信技法を用いて分散トランザクション処理を高速化する革新的な提案(*3),(*4)をするなど,データベース研究におけるパイオニアの一人である。そこで,上述の研究を進めるための最適な研究環境を求めて,貴学SFCに入学し川島英之研究会に入会することを強く希望する。

 

 

 

(*1) 川島英之.“データ基盤システムの動向”,コンピュータソフトウェア, Vol.33, No.3, pp.44-49, 2016

(*2) 川島英之.“センサデータの高鮮度化・周期的発信・時系列処理を実現するデータベースシステムに関する研究”,博士論文(慶應義塾大学), 2005

(*3) 村田直郁,川島英之,建部修見.“RDMAを用いたRAMPトランザクションの高速化”,情報処理学会第137回OS研究会報告,Vol.2016-OS-137, No.8, pp.1-11, 2016

(*4) 村田直郁,川島英之,建部修見.“RDMAの適用によるRAMPトランザクション処理の高速化”,情報処理学会論文誌データベース,Vol.10, No.2, pp.19-30, 2017

 

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