■ 議論の整理・・・
人工知能(AI)の学習能力を飛躍的に高めた深層学習(ディープラーニング)は,機械がデータに基づいて自ら学習する能力を持つことを実現する技術をいう。ディープラーニングでは,機械が学習するために「ニューラルネットワーク」というアルゴリズムを使う。ニューラルネットワークは,人間の脳の生物学的な仕組みから着想を得てノード(1個の神経細胞に相当)がネットワーク状に結合した,多層構造をとる。層とノードの数を増やすほど,より高度な判断が可能となる。ディープラーニングを実現するニューラルネットワークにはいくつかの種類が選択肢として存在する。それぞれが持つ構造や性質によって,扱える問題や得意とする問題が異なることから,AIに何をさせたいのか,そのためにはいかなる性質のデータを与えるかを検討せねばならない。
■ 問題発見・・・
さて,ディープラーニングを考える場合,「ブラックボックス問題」について理解しておくことが重要である。
■ 論証・・・
ブラックボックス問題とは,何らかの判断を行うAIをディープラーニングで実現した場合,「なぜその判断に至ったのか」を誰も説明できなくなる問題を指す。たとえば,重回帰分析を使って予測値を推測する機械を作った場合,説明変数間の相関関係を定式化し,それによって予測値を算出したことが理解ができる。必要に応じて推論モデルを修正することもできる。ところがディープラーニングの場合,機械が説明変数をどのような関係にあるものとして捉えたかを理解するには,構築されたネットワークを読解する必要がある。ネットワークが多ノード・多重層になれば人力による結果検証は困難となる。なぜAIがそう考えたのか,なぜこの結論に達したのか,を説明できなければ,誤った結論や推定が出されても,誰もそれに気付くことができなくなるのである。
■ 結論・・・
そこで,コンピュータサイエンスの第一人者にしてニューラルコンピューティング研究(*1)~(*3)の泰斗である貴学環境情報学部の武藤佳恭教授に師事し,ブラックボックス問題の解決策として,「説明責任を果たせるAI」の実現に向けて研究を深めたいと考えている。
■ 結論の吟味・・・
貴学SFCで唯一ニューラルネットワーク研究をテーマとして掲げる武藤佳恭研究会こそ,上述の研究を進める最適な環境であるとの確信のもと,貴学SFCに入学し,武藤佳恭研究会に入会することを強く希望する。
(*1) 舘俊太,武藤佳恭.“3層ニューラルネットワークと変形テンプレート法による動画像の人物検出”,情報処理学会論文誌:数理モデル化と応用(TOM), Vol.44, No.SIG 14(TOM 9), pp.48-56, 2003
(*2) 青葉雅人,武藤佳恭.“Second-order neural networkと自己組織化マップを使ったジェスチャー認識のための動作特徴抽出”,情報処理学会研究報告:数理モデル化と問題解決(2004-MPS-52(2)),pp.5-8, 2004
(*3) 茶志川孝和,武藤佳恭.“Second-Order Neural Networkを用いた移動物体領域抽出法の応用”,情報処理学会研究報告:数理モデル化と問題解決(2004-MPS-52(1)), pp.1-4, 200
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