慶應SFC 環境情報学部 AO入試 志望理由書 提出例(内藤泰宏研究会向け)

 議論の整理・・・ 

 生物の細胞は数多くの代謝反応が絡み合った複雑な系であるが,個々の代謝反応(酵素反応,遺伝子の転写・翻訳,タンパクのDNA結合など)は比較的容易にコンピュータ上でモデル化できる。そこで,細胞内で生じる全代謝反応をそれぞれモデル化したうえで並列に実行すれば,細胞内の複雑な生命活動がシミュレーションできることになる。これを具現化したものが,汎用細胞シミュレータE-CELLである(*1)(*2)。実世界で起こる生命現象を記述するモデルにてシミュレーション実験を行うことにより,複雑な生命現象を統合的に解析し潜在する因果関係の抽出が可能となる。免疫細胞や神経細胞などをコンピュータ上に構築できれば,創薬や医療のための様々な仮想実験もまた可能となる。この他,薬効・毒性の予測など応用範囲が広がる可能性も示唆されている(*3)

 

 問題発見・・・ 

 そこで,E-CELLシステムのモデリング・シミュレーション機能を拡張応用して,細胞死(アポトーシス)のメカニズムが実装できれば応用範囲が広がると考える。

 

 論証・・・ 

 代謝物量の一斉測定技術であるメタボロームの測定を中心とする実験技術(マルチオミクス解析)の向上により,シミュレーション実験で得た仮説について実験データを用いて検証することも可能となっている。いわゆるウェットな実験と,モデリング・数理解析とを連携させることで,たとえば既知の物質間における相互作用に関する知見と,実験データをもとに生命現象のモデルを構築し,シミュレーション結果をウェットな実験により確認し,仮にシミュレーション結果と実験結果が異なった場合には,先の仮説を再検討してモデルを修正し,再度シミュレーション実験を行うという研究サイクルもまた可能となる。シミュレーション結果から得られた予測は,ウェットな実験系の実験効率を著しく向上させることも特筆に値する。

 

 結論・・・ 

 そこで,貴学環境情報学部で,生物細胞の代謝反応をコンピュータ上で再現する研究に携わっている内藤泰宏准教授に師事し,細胞死(アポトーシス)をE-CELLシステム上にモデリングしシミュレーションできる研究環境を構築し,がん抑制遺伝子ががん細胞を死滅させるメカニズムを解明したいと考えている。

 

 結論の吟味・・・ 

 内藤泰宏准教授は,貴学先端生命科学研究所にてE-CELLシステムのプロジェクトメンバーとして,生命科学分野で目覚しい研究成果をあげている。この研究環境にて上述の研究を進めるために,SFCに入学し内藤泰宏研究会に入会することを強く希望する。

 

 

 

(*1) 内藤泰宏,冨田勝.細胞シミュレーション:E-CELLプロジェクトの挑戦Bio Medical EngineeringVol.16, No.1, pp.36-42, 2002

(*2) 内藤泰宏.“E-CELLプロジェクトKEIO SFC JOURNALVol.13, No.2pp.49-60, 2008

(*3) 内藤泰宏.細胞・組織シミュレーションの現状:薬効・毒性の予測にむけて,ファルマシア,Vol.44, No.9pp.885-889, 2008

(*4) 内藤泰宏.生命を計算して理解するKEIO SFC JOURNALVol.13, No.2pp.49-60, 2013

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