慶應義塾大学 法学部政治学科 FIT入試 志望理由書 提出例(麻生 良文研究会向け)

■議論の整理

わが国の公的年金制度の抱える問題については多岐に渡る。負担と給付の世代間格差、年金債務の問題、年金バランスシートをめぐる論争、 少子・高齢化対策、女性の労働供給に与える影響である。

例えば、わが国の公的年金制度には、負担と給付の世代間格差が存在する。簡単なモデルを用いた分析では、賦課方式の年金制度のもとでは必ず世代間格差が生じること、そして、その根本的な原因は、制度発足時の高齢者への移転にあることを明らかになった。高齢者への移転が、賦課方式の年金制度のもとでの年金純債務の原因であり、この債務を発散させないために暗黙の税負担が存在していることが、賦課方式の年金収益率の低い原因である。

また、少子・高齢化の進展は年金財政に深刻な影響を与える。このため、何らかの少子化対策が必要だという議論は通念になっている。しかし、かりに少子化対策が有効で、出生率が回復したとしても、そのことが国全体の人口構成(特に年金扶養比率)を変えるには長い時間がかかることをわすれてはいけない(*1)。

 

■問題発見

ここで、少子高齢化における公的年金に対する現制度の課題について改めて考えてみたい。

 

■論証

少子・高齢化の進展が深刻な影響を与える年金財政が回復することは容易ではない。回復するためには出生率の問題が関わってくる。また、たとえ出生率が回復しても、出産可能な年齢層の人口の絶対数が減少を続けていれば、かなりの期間にわたって、出生数は減少を続ける。出生率が非現実的に高くなったとしても、21世紀の高齢化の程度は緩和されない。さらに、出生率が回復しても、人口構成に影響を与えるまで長い時間がかかったり、 その影響が大きくないならば、少子化対策を通じて年金制度の維持を図るという議論は疑問が残る。それよりも、高齢化を見越して年金制度や医療保険制度の見直しを図る方が合理的である。

その解決策として、まず、年金純債務を年金制度からひとまず切り離 し、過去期間に対応した給付債務は、現在の積立金で足りない部分について は国債発行で賄う。そして、この国債残高をどう処理するかを別途考える。この債務の償還のために、給付超過世代から少しでも税金をとることができれば、世代間格差の是正につながる。それができなければ、今後の世代で負担する方法を考える。その上で、将来期間に対応した給付と今後の保険料については、積立方式の原則で運営する。当面、積立金を過去債務の清算のために発行した国債で運用すれば、大きな変化は無い。 年金の問題の基本的部分は、過去債務の問題であるから、それを切り離して、その上で、その債務の負担についての合理的なルールを考えるべきである(*1)。

 

■結論

そこで、公的年金の世代間移転の問題を解決できる分析モデルを考案し、少子高齢化における公的年金の役割について研究したいと考えている。

 

■結論の吟味

上述の研究を遂行するため,貴学法学部政治学科に入学し,公共経済学、公的年金と資本蓄積や公的年金の世代間移転の推計を専門に研究している麻生良文教授の研究会に入会することを強く希望する。

 

※1麻生良文(2005)「年金財政の現状と問題点 (2・完)」法學研究 : 法律・政治・社会 (Journal of law, politics, and sociology). Vol.78, No.7 (2005. 7) ,p.127(32)- 158(1)

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