慶應義塾大学 法学部政治学科 FIT入試 志望理由書 提出例(河野 武司研究会向け)

■議論の整理論

D・バトラーとA・ラニーは、1994年に出版した編著の中で、アメリカ、インド、イスラエル、オランダとともに、主要な民主主義諸国の中でこれまで国民投票を実施したことのない国の一つとして日本をあげているが、この状況は依然として変わりない。確かに地方自治においては、住民投票をはじめとする直接民主制的方策が導入されているが、仮に住民投票が実施されてもそれは決定権を有さない諮問的なものにしか過ぎない。その諮問的な住民投票に対しても、議会関係者からは議会主権の侵害であると異議の申し立がなされることがしばしばである。

参加デモクラシーの論じ方については、多様な形態がある。統治形態として民主制を論じる場合の最大の焦点は、いかなる方法が民意をより良く政治に反映できるか、換言すればどのような仕組みが治者と被治者の同一性を確保できるかといった間題に帰結する。このようなデモクラシーの原理を理想とし、あくまでも貫徹すると、古代ギリシアの都市国家アテネで行われていた集会デモクラシーが最も望ましいということになる。だが、実際は、近代から今日に至るまで統治の形態として現実に機能しうるデモクラシーの方法については、代表制であるという議論が支配的であった。そして、いつの時代にもどのような国においても代表制に限らず今までのデモクラシーの形態は、常に政治腐敗と「利益の集中とコストの分散」という結果をもたらす私的・特殊利益集団の践雇を可能としてきた。

しかし、近年におけるインターネットの急速な展開によって、選挙だけではないより広範かつ直接的な政治参加を期待する声が拡大している。さらに、インターネットは反民主的行為や動向に関する情報を、まさに氾濫させることを可能としている。より覚醒した市民を前に、現在までのデモクラシーの 方法がその発生を抑止できなかったこのような歪みを是正し、まさに「人民の人民による人民のための政治」を実現するために、より一層のデモクラシーの強化、深化が求められている(*1)。

 

■問題発見

ここで,インターネットの台頭による近年の参加デモクラシーに対する課題について改めて考えてみたい。

 

■論証

インターネットの技術は現在でも発展を続けている。テクノロジーの進歩は、集会デモクラシーを否定するのと同じ論法で、今日の広範な参加要求を拒否することをもはや不可能としている。一過性や単一方向性を基本的な特徴とした従来のメディアに対して、インターネットの最大の特徴は非同期性や相互作用性にある。

インターネットの世界は、報じられたときに見なくても、聞かなくても、読まなくても、後で好きな時問に好きな場所で必要な情報を検索し入手することを可能としている。さらにはそのようにして手にした情報や呼びかけに対して、他の多数の人の参加も許しつつ個人的に瞬時に反応し返事ができるという双方向となる議論の場を提供している。様々な情報が蓄積され、瞬時に必要な情報を検索できるインターネットの世界は、治者と被治者との間の情報格差を劇的に縮小させようとしている。

また、政府を監視する役割を担っていたマス・メディアだけでなく、インターネットという情報の武器を利用して、国民自身が警告の笛を他の国民達に発することができるようになったのである。

代表制デモクラシーと直接デモクラシーを対立的に捉えるのではなく、両者の長所を融合させた半直接民主制の議論をまとめた上で、それをより進化させたものが全面的半直接民主制である。インターネットという情報の武器は人びとの政治的リテラシーをその登場以前と比較して より一層向上させるものと考えており、さらには政治的リテラシーの向上は、「人民の人民による人民のための政治」としてのデモクラシーをより豊かなものとするであろうことを期待するものである。

したがって、情報分野における技術革新は一般の人びとの情報へのアクセスを制限することを不可能とし、極限られた政治的エリートによって情報が独占されていた時代に構築された代表制で統治できるほど、一般な人々は柔軟な存在ではなくなった。そこでインターネットの展開を前提として、今日現実に実行可能なデモクラシーをより深化させる方法について検討するべきである(*1)。

 

■結論

そこで,インターネットの展開を利用した住民参加型デモクラシーのフレームワークを検討し、相互作用型のデモクラシーの役割について研究したいと考えている。

 

■結論の吟味

上述の研究を遂行するため,貴学法学部政治学科に入学し,政治理論や計量政治分析を専門に研究している河野武司教授の研究会に入会することを強く希望する。

 

※1河野 武司(2004)「全面的半直接民主制に関する一考察」法學研究 : 法律・政治・社会 (Journal of law, politics, and sociology). Vol.77, No.12 (2004. 12) ,p.195- 219

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