慶應義塾大学 法学部政治学科 FIT入試 志望理由書 提出例(大石 裕研究会向け)

■議論の整理

マス・コミュニケーション研究は、フレーム(フレーミング)概念を取り入れ、それをメディア・フレームとして鋳直すことで、新たな視座を獲得してきたと評価できる。それは同時に、マス・メディア効果論において比較的看過されていた伝達・交換される情報・メッセージの意味と、そこで扱われる出来事 とその関与者が意味づけされる過程に強い関心を寄せることであり、またマス・ コミュニケーションという社会過程を新たな角度から権力作用として読み解くことでもあった。

例えば、メディア言説分析とは、メディア・テクストの意味をいったん動態化 ・流動化さ せ、それを社会的・歴史的な文脈に置きつつ、そうした文脈との関連から、生産過程と受容過程における意味づけの過程に関して様々なレベルで働く権力作用の分析を行うことである。 この場合、メディア・フレームは、出来事がメディア・テクストに転換される際に、メディア・テクストを解読する際に働く諸力を具体化し、可視化する装置として捉えられている

一方、社会運動現象は、その構造的側面からの分析とは別に、その意味世界の探求が必要になるということ、さらに社会運動現象は、仮にそれが構造的に一枚岩に見える現象であっても多様な意味側面を内包する、という認識が、近年、社会運動論の中でもしだいに共有されるようになり、それとともにフレーム分析の有用性が論じられるようになってきた(*1)。

 

■問題発見

ここで、フレーム(フレーミング)概念を媒介として、交錯するマス ・コミュニケーション論と社会運動論に対する課題について改めて考えてみたい。

 

■論証

社会運動というのは、政治エリートに対して「圧力」をかけるためのルートの一つであり、政治参加の一つの形態である。社会運動が提示した問題や争点、そして社会運動 それ 自体の展開にとって、メディア ・フレームが重要な要因となる事例も数多く見られる。

また、「新しい社会運動」に象徴される、「文化の政治化」、そして「アイデンティティの政治」に対する認識の高まりは、一方においては民主主義社会の民主化という、一見するとトートロンジカルな問題提起を行い、無意識 ・ 不可視のまま潜在化されてきた問題に対する注目は、さらなる民主化の方向へと社会を突き動かしてきた。実際、「新しい社会運動」に象徴される、「文化の政治化」という傾向の中で、社会運動は自らのフレームを構築しながら、社会の支配的な価値観を反映するメディア・フレームと対立し、その変革と再構築をめざすようになってきた。例えば、人権や環境といった問題を積極的に取り上げることで、メディア・フ レームは社会の支配的な価値観と連動しながら変容をとげてきた。

したがって、アイデンティティの問題にことさら関心を寄せてきたメディアやコミュニケーションの理論、例えば言説分析(あるいは物語分析)は 、「新しい社会運動」が民主主義理論、そして民主主義社会にとって両義的であることをまずは認識し、そのうえでメディア ・フレームについて論じるべきである。 (*1)。

 

■結論

そこで、「新しい社会運動」の視点を取り入れたメディア・フレームに関する分析方法を考案し、マス・ コミュニケーションの権力作用の役割について研究したいと考えている。

 

■結論の吟味

上述の研究を遂行するため,貴学法学部政治学科に入学し,マス・コミュニケーション論や政治コミュニケーション論、ジャーナリズム論を専門に研究している大石裕教授の研究会に入会することを強く希望する。

 

※1大石裕(2007)「メディア・フレームと社会運動に関する一考察」三田社会学 (Mita journal of sociology). No.12 (2007. ) ,p.19- 31

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