慶應義塾大学 法学部政治学科 FIT入試 志望理由書 提出例(宮岡 勲研究会向け)

■議論の整理論

主義やパラダイムと呼ばれる、現実主義、自由主義、 および構成主義の主要理論間の論争は終わり、国際関係論は「理論的平和」期に入った。国際関係理論の終焉という点については否定されているが、パラダイム間論争の衰退については肯定の意見が出ている。

国際関係論におけるパラダイム間論争について、1980年代前半ごろまでに国際関係論で起こったとされる三つの「大論争」がある。第一に、「第一次大論争」と呼ばれる1930年代から1940年代にかけて、理想主義と現実主義との間で起こったとされる論争である。第二に、第二次大論争は、1960年代後半における伝統的アプローチと科学的アプローチとの間における主に方法論上の論争であった。第三に、現実主義の世界観に対して多元主義や構造主義から批判が起こったことに対する論争である。

その後、1980年代から1990年代にかけての科学的パラダイム間における新しい論争が起こった。国際情勢の変化も後押しして、1990年代には、特定の主題に関する理論間の主張の差異を経験的に検証するという、実質的な論争が起こった。新しい論争の出発点として、簡潔化と科学化により再定式化した新現実主義があった。そして、2000年代以降には、パラダイム間論争の減少が起こっている(*1)。

 

■問題発見

ここで,国際情勢の視点から2000年代以降の国際関係論のパラダイム間の論争が減少してきた背景に対する課題について改めて考えてみたい。

 

■論証

冷戦の終結は、新しい理論の必要性を高め、特に構成主義の台頭に貢献した。第一に、冷戦の終結とそれに続くソ連の崩壊は、二極構造の終焉を意味したが、そもそもウォルツの現実主義ではそうした構造の変化を説明できなかった。また、他の国際関係理論も冷戦の突然の終結を予測することができなかった。冷戦の終結そのものが理論の論争テーマとなった。また、地域紛争や民族紛争といった新たな対立や紛争も生じており、規範やアイデンティティ、文化といった観念的要因が安全保障問題にとって重要になってきたことが構成主義の促進要因となった。

2000年代になってパラダイム間の論争が減少してきたと指摘されている。この背景としては、いくつかの傾向を挙げることができる。第一に、最近になって、新しいパラダイムまたは科学的研究プログラムを定式化するような著作は公表されていない。ウォルツ『国際政治の理論』、コヘイン『覇権後の国際政治経済学』、およびウェント『国際政治の社会理論』などに匹敵するような著作は存在しない。また、この期間、理論開発のための論文も減少している。

第二に、パラダイム内の多様性が高まり、パラダイム内の論争が起こるようになっている。例えば、現実主義も細かく分かれてきて、古典的、新、防御的、攻撃的、および新古典的などの修飾語がつくようになっている。例えば、防御的現実主義や新古典的現実主義は、国内要因も導入して理論化を行っている。これに対しては、同じく国内要因を重視する自由主義の研究者から、パラダイム間のあるべき境界を無視した現実主義の過剰拡張であるとして批判が出ているほどである。

第三に、パラダイム内の多様性が高まったことにより、あるパラダイムの一部が他のパラダイムの一部と収束する現象も起きている。

したがって、今後、パラダイム論の多様化を分析し、現在の国際関係論のパラダイム論について検討すべきである(*1)。

 

■結論

そこで,パラダイム論の歴史的背景の分析を通じて、現在の日本社会に合った国際関係論の活用スキームについて研究したいと考えている。

 

■結論の吟味

上述の研究を遂行するため,貴学法学部政治学科に入学し,国際政治理論や安全保障研究を専門に研究している宮岡勲教授の研究会に入会することを強く希望する。

 

※1宮岡勲(2019)「国際関係論におけるパラダイム間論争 : 学説史からの考察」法學研究 : 法律・政治・社会 (Journal of law, politics, and sociology). Vol.92, No.1 (2019. 1) ,p.73- 96

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