慶應義塾大学 法学部政治学科 FIT入試 志望理由書 提出例(西野 純也研究会向け)


■議論の整理論

日韓国交正常化40周年にあたる2005年、日韓関係はさらに発展することが期待されていた。日韓両国政府は2005年を「日韓友情年」と定め、文化交流行事などへの積極的支援を通じて未来志向的な関係構築を促進する機会を提供しようとしていた。しかし実際には、2005年の日韓関係は未来へ進むどころか、靖国神社参拝、歴史教科書、竹島問題などいわゆる「歴史問題」によって挑戦にさらされ続けた厳しい年となった。3月16日の島根県議会による「竹島の日」条例可決以降、日韓関係は歴史問題にとらわれてしまったのである。しかし、この時期から顕在化した日韓関係に対する挑戦は過去の問題に由来するものだけではない。

盧武鉉政権の外交安保政策の視点から見ると、当時の日韓関係の悪化は、いわゆる歴史問題、靖国神社参拝、教科書問題、竹島のみによって引き起こされたのではなく、北朝鮮問題や中国の台頭、そして対米同盟関係といった東アジアの地政学をめぐる問題に対する日韓両国の異なる認識と対応に起因するものである(*1)。

 

■問題発見

ここで,小泉政権及び盧武鉉政権の外交安保政策が日韓関係の悪化に与えた影響に対する課題について改めて考えてみたい。

 

■論証

2005年3月16日の「竹島の日」条例可決に対する韓国政府の激しい反発は、日本側では驚きを持って受け止められた。また、2001年には歴史教科書問題や小泉首相の靖国神社参拝が日韓間の懸案として浮上したが、趨勢としては日韓間の文化交流および国民交流の拡大、特に2002年のワールド カップ共催と「韓流」ブームに支えられて、この頃の日韓関係はとりわけ市民レベルにおいて大きな発展が見られた。したがって、2005年3月以降の「突然の」関係悪化は、事態の推移からも明らかなように、指導者レベルでの盧大統領の小泉首相に対する信頼が崩壊したことによって引き起こされたと思われる。

また、政権発足当初、盧武鉉大統領は小泉首相の日朝国交正常化への意志とそのリーダーシップを高く評価し、それが良好な日韓関係のスタートに貢献していた。しかし、日本政府が強硬な国内世論とブッシュ政権に同調して対北朝鮮政策の力点を「対話」よりも「圧力」に置くようになると、北朝鮮問題への対応をめぐり日韓間では摩擦が顕在化していった。

2005年3月以降の盧大統領の対日強硬姿勢も、必ずしも歴史問題だけが原因ではなく、盧武鉉政権が打ち出した「平和繁栄政策」と日本の対北朝鮮政策がその履行において乖離していき、北朝鮮問題での取り組みにおける小泉首相への期待が失望に変わったことによるものであった。朝鮮半島の平和と繁栄を実現するためのパートナーとして考えていた日本への失望とも言える。対北朝鮮政策だけではなく、対米同盟政策やそれと表裏をなす中国との関係設定をめぐっても日韓は異なる認識と対応を見せ、それが日韓関係の管理をより難しくした。こうした地政学的問題に対する盧武鉉政権の政策は、「東北アジア均衡者論」として表れた韓国の新しい地域秩序観に由来するものであった。盧武鉉政権は「東北アジア時代構想」と名付けた域内国による多国間安保・経済協力機構の創設を目指すビジョンをも掲げていた。この構想も、地域における新しい秩序を志向する盧武鉉政権の意欲の表れであった。しかし、韓国の新しい秩序認識を共有する基盤は日韓の間には整っていなかったと言わざるを得ない。

したがって、日韓間の不幸な過去に対する認識や解釈をめぐり対立し、北朝鮮核問題への対応でも異なる認識を示している現在の日韓関係の原型あるいは起点とも言える姿がそこからは浮かび上がってくる。現在の日韓関係を分析する上で、改めて東アジア地域の現在や将来の問題について検討すべきである(*1)。

 

■結論

そこで,日韓両政府の外交政策に対する認識の違いの分析を通じて、現在の日韓関係の理想的な在り方について研究したいと考えている。

 

■結論の吟味

上述の研究を遂行するため,貴学法学部政治学科に入学し,現代韓国朝鮮政治や東アジア国際政治、日韓関係を専門に研究している教授の西野純也研究会に入会することを強く希望する。

 

※1西野純也(2019)「盧武鉉政権期の日韓関係 : 韓国の新しい秩序認識の台頭」法學研究 : 法律・政治・社会 (Journal of law, politics, and sociology). Vol.92, No.1 (2019. 1) ,p.97- 116

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