慶應義塾大学 法学部政治学科 FIT入試 志望理由書 提出例(玉井 清研究会向け)


■議論の整理論

昭和3(1928)年2月20日に実施された第一六回衆議院議員選挙は、大幅な選挙制度の改正と大きな政党再編が行なわれて以降、初めて実施された総選挙であった。選挙制度の改正は、従前制限されていた納税資格が撤廃され普選の導入が図られるとともに、小選挙区制から中選挙区制への移行を骨子としていた。また、前回総選挙で鏑を削った有力四政党の内、革新倶楽部の立憲政友会(以下、政友会と略)への合流(大正14年5月14日)が行なわれるとともに、政友本党と憲政会との合同により立憲民政党(以下、民政党と略)が誕生し(昭和2年6月1日)、昭和初頭の二大政党体制へと導く政党再編も行なわれた。こうした選挙制度の改正と政党の再編が、政党を中心に行なわれる公認候補の選考や擁立に、あるいは候補者の選挙戦略やそれに基づく選挙運動に少なからぬ影響を与えたことは想像に難くない。

中選挙区制の導入に伴い、多くの選挙区において、従前の選挙地域の統合が行なわれ選挙運動地域も拡大された。その結果、多くの候補者は、当選ラインに達するため統合拡大された新たな地域への、小選挙区制下において自らが地盤と考えてきた以外の地域への進出を目指した。これは、逆の立場から見れば、自らの地盤に新たな競争者が進出してくる場合もあり、同一政党間の競争も激化させた(*1)。

 

■問題発見

ここで,中選挙区制の導入が選挙候補者や政党に与えた影響に対する課題について改めて考えてみたい。

 

■論証

第一六回衆議院議員選挙は、大幅な選挙制度の改正と大きな政党改編が行なわれて以降、初めて実施された総選挙であったため、政党の公認調整は円滑には進まなかった。結果として、非公認の候補者を含め 同一政党候補者間で共倒れの危険性のある選挙区が多く生じることになった。

例えば、東京六区の民政党の場合、北豊島郡を主地盤とする候補者選考については、中選挙区制の導入に より生じがちであった共倒れの危険を招くような公認の乱立は回避したが、非公認の同一政党系候補の出馬は抑えることができず、結果として乱立状態になっていた。南葛飾郡を主地盤とする候補の選考に関しては、競合する11名に公認を出し当選させることができたが、それは、東京五区の場合と同様、無産政党の選挙協定の不調に よりもたらされた結果であり、必ずしも余裕のある戦いではなかった。

一方で、中選挙区制への改正は、各候補者に当選への種々の道筋を聞き、期待を向上させ出馬を促すことになったのである。例えば、候補者の中には、従前よりの自らの地盤を固めることにより当選可能と考える者や、自らの地盤に加え他の地域に積極的に進出することにより当選可能と考える者、さらに、選挙区内全般から広く票を集めることにより当選可能と考える者がいた。

こうした状況下、各候補者は、対立政党だけでなく同一政党候補者との競合にも晒された。選挙関連文書を見ると、各候補者が、他の候補者との差別化を目指した選挙運動を展開していることが確認できる。それらは、地縁関係や政治活動歴、あるいは事業、法曹、陸軍、大学等の自らの経歴に関連し、そこから派生する訴えとなり、同時に、各候補者の 支援組織を明示していた。さらに、東京の選挙区の中で、東京の都市化に伴う近郊開発による人口増加地域では、有権者層を意識した訴えが行なわれていたことや、既成政党候補者でありながらも納税資格撤廃に伴い生まれた新有権者の取り込みを目指す文言も盛り込まれていたことである。さらに、政党を離脱した候補者が惨敗したのとは対照的に、地縁関係の薄い輸入候補者が、政党の公認候補と して出馬し上位当選を果たしていた事例からは、選挙に際し機能する大政党の集票マシーンの構築が進みつつあることを確認できた。それは、続く二回の総選挙を経るまでの期間、我が国に現出した二大政党体制を支え、 さらに議会においては依然として二大政党の優位を継続させた 基盤として位置づけることができる。

したがって、中選挙区制度の移行による選挙制度の改正が与えた政党や候補者に与えた影響を分析することで、現在の二大政党体制につながる選挙制度の在り方を検討すべきである(*1)。

 

■結論

そこで,中選挙区制度の移行時の党や候補者の実施結果を分析し、現在の選挙制度について研究したいと考えている。

 

■結論の吟味

上述の研究を遂行するため,貴学法学部政治学科に入学し,近代日本政治史を専門に研究している玉井清教授の研究会に入会することを強く希望する。

 

※1玉井清(2008)「第一六回衆議院議員選挙における中選挙区制導入の影響について」慶應の政治学 日本政治 : 慶應義塾創立一五〇年記念法学部論文集 (2008. ) ,p.203- 237

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