慶應義塾大学 法学部政治学科 FIT入試 志望理由書 提出例(田上 雅徳研究会向け)

■議論の整理論

宗教改革者ジャン Hカルヴァンの主著とされる『キリスト教綱要』(以下、『綱要』と略記する)は、1536年に初版が世に関われて以来、数回にわたる改訂がなされ、そして1559年、最終版の公刊をみた。本書はただちにフランス語やオランダ語、英語やスペイン語等に訳されていき、16世紀が終わる頃までには、多くのヨーロッパ人は自国語で『綱要』を読むことができるようになったからである。宗教改革運動は、ひとつの神学的スタンダードブックを手に入れたことになる。

さて、このキリスト教神学書の最終版全四巻が政治学徒にとっても無視できないのは、その最終巻最終章全体が政治思想を取り扱っているからである。全32節からなる章の構成では、カルヴァンはまず第一節から第三節において、 世俗的統治が信仰者にとって有する意義を総論的に述べる。第四節からは「世俗的為政者」が論じられ、彼らの存在が神に由来すること・彼らが心すべき使命・戦争・課税権等のトピックが第22節まで取り上げられることになる。そして、第22節から最終節まで、彼は「人民」(被治者)にかかわる問題を取り上げる。この個所での中心的論点は世俗的為政者への服従であり、後にカルヴィニズムの政治思想ということで大きな議論を引き起こすこととなる抵抗についても、ここで言及がなされる。カルヴァンの政治思想はその神学的思惟と切り離せないものであり、ここでの政治思想と神学的思惟との接合の仕方それ自体が政治思想史的意義を有している。「政治的なるもの」の概念を前提にして、それとカルヴァン神学とがどう関係するのかを検討してきたといえる。だが、こうしたアプローチを採用し続ける限り、「最終章」の意義は、著者カルヴァンの意図を踏まえた形ではうまく説明できないという課題が残る(*1)。

 

■問題発見

ここで,カルヴァンの政治思想を分析するに当たり、カルヴァンの世俗的為政者論に対する課題について改めて考えてみたい。

 

■論証

カルヴァンにとっての世俗的為政者とは、救済史的存在である。そして、そもそも救済史という特殊キリスト教的な存立基盤を前提とする以上、彼ら世俗的為政者は究極的には自律性を借称することのできない存在であり、その言動はすべて神に対して説明責任を負わなくてはならない。

一方で、宗教改革とはある意味で、キリスト教世界としてのヨーロッパが経験した政治の危機だったともいえる。改革運動の過程で信仰する個々の主体の内面が自己完結した結果、その主体同士が異なる理念や利害を有しており、そこから必然的に軋轢が生じ、そして強制的な統合が要請される、という認識が否定された。これに対してカルヴァンは、現世にあっては政治的解決が求められざるを得ない軋轢が、信仰者の間でさえも生じることを直視した。

また、単独の為政者による権力の占有をカルヴァンは、教皇を擁するローマカトリック教会への批判とも相まって、未だ完成を見ない世界で働く罪の誘惑に対して楽観的にすぎるとした。その結果、一定の枠内に制限された責務を世俗的為政者に認めつつ、彼は、ある枠内に制限された責務を負う他の統治参与者を正当化していった。

世俗的為政者という論点は、秩序論や人間論そして共同体論などが集約される。カルヴァンの議論のある部分は、世俗的為政者への服従を徹底的に正当化するものであり、他の部分はそれを問い直す契機を秘めている。

世俗的領域のプレゼンスが高まる中、西欧の宗教は人々の内面という「空間」に後退してここに能城し、それを死守しようとすることで政治的な存在証明を訴えていく。神聖不可侵な内面性に対する権力の介入を不当と見なし、近代自由主義を確立したという点では、大きな貢献を果たした。ただし、政治という人間の営みを相対的にではあるが真撃に受けとめる、ひとつの見方は失われている。近代以降、政治はその絶対化が警戒される問題として考えられるよう になった。

したがって、カルヴァンにとっての世俗的為政者という視点から西欧諸国における宗教と政治の関係性について改めて検討すべきである (*1)。

 

■結論

そこで,カルヴァンの世俗的為政者論を分析し、現在の西欧諸国の人々の政治に対する意識に与える影響について研究したいと考えている。

 

■結論の吟味

上述の研究を遂行するため,貴学法学部政治学科に入学し,西欧政治思想史を専門に研究している田上雅徳教授の研究会に入会することを強く希望する。

 

※1田上雅徳(2011)「カルヴァンの為政者観」法學研究 : 法律・政治・社会 (Journal of law, politics, and sociology). Vol.84, No.2 (2011. 2) ,p.307- 335

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