慶應義塾大学 法学部政治学科 FIT入試 志望理由書 提出例(高橋 伸夫研究会向け)

■議論の整理論

1980年代以降、欧米における中国革命研究は、中国共産党を成長と勝利に導いた決定的な要因を見極めようとする企てから離れて、各革命根拠地の内部的諸関係に関するどちらかといえばミクロな実証研究に向かった。日本においても、必ずしも数は多いとはいえないが、根拠地に関する一連の新たなタイプの研究があらわれた。これらの研究はいずれも中国で公表されたきわめて有用な根拠地別の新たな資料集を利用している。この研究を進めていく上で、現在、三つの視点が必要である。

第一に、農民の戦略に開かれた社会的・政治的空間として根拠地の党-農民関係を描き出す必要がある。これこそが農民を真に革命の「主体」たるにふさわしい位置に押し上げるものである。今までの研究では共産党の表明するイデオロギーや、政策や、指導者集団の構成の変化などに焦点が当たっていたが、農民の実際の行動様式、心性、動機などの研究が今後、重要である。なぜなら、いまや農民が一定の能動性と積極性をもって政治的ゲームに参加する主体であったからである。また、同様に、農民に比べてさらに研究が遅れている都市の労働者に対しても研究対象を広げていくべきである。

第二に、共産党の構成員である。党の頂点部分における人的構成と、彼らが表明するイデオロギーと政策、およびその変化が理解できれば、共産党とその運動を理解できるなどというイメージはもはや過去のものとなった。したがって、今後の研究においては第二に、党員の社会学的分析が、さらには文化人類学的分析が必要とされる。

一般党員の階級的背景や行動様式や心性や動機について、また党組織がどの程度徹底した社会的・文化的混交の場-農村の伝統文化と都市の新しい文化、農民文化とマルクスレーニン主義の文化、異なる地域の諸文化だったのかについて、さらに研究すべきである。

第三に、革命に関する「下からのアプローチ」は、従来の「上からの」アプローチの厳密な意味での代替的戦 略として提示されるべきではないということである。したがって、「下からのアプローチ」を、つねに広い文脈に接合する努力を必要としている(*1)。

 

■問題発見

ここで,党-農民関係を考える上で、農民の実際の行動様式、心性、動機などに対する課題について改めて考えてみたい。

 

■論証

中国共産党と農民の関係についての近年の研究において、二つの課題がある。すなわち、革命の地域的多様性、および共産党からみた場合の農民の扱いにくさである。

第一に、革命根拠地の個別的研究の進展に伴い、共産党が推進した革命を、あたかも均質な一枚の布地とみなすことはますます困難になりつつある。

第二、農民は党が農村に持ち込もうとした文化に適応を迫られたが、他方で党は農村の伝統文化にある程度適応することを余儀なくされていた。農民の少なくとも一部は、革命を利用して自ら伝統文化からの脱却を図ったが、党は伝統文化の少なくとも一部を意図的に温存した。農民の一部は外部の勢力と結びつくことによって、積極的に自らの過去からの脱却を試みようとした。党が掲げた婚姻の自由に対する若い女性たちの熱狂的な歓迎ぶりや、青年たちの伝統文化に対する過激な攻撃はその例である。

一方、党は革命を進めるために、アヘン栽培にせよ、女性の伝統的役割の温存にせよ、意図的に農村の伝統の一部を利用しようと試みた。しかも、党が農村の伝統を破壊しようとした場合でも、意図に反してかえって伝統を強化してしまうことがあった。根拠地の農村には一見新しい制度、新しい組織、新しい語彙と象徴が行き渡りながら、その背後には社会結合の形態や農民の価値と行動様式などの面で強固な連続性が残されたのである。

したがって、革命の地域的多様性を、各根拠地固有の地理的、社会的、経済的、文化的諸条件の差異とともに、そこで社会変革を成し遂げようとした革命勢力の政策的、制度的、あるいは組織的差異を基に分析するべきである(*1)。

 

■結論

そこで,中国共産党と農民の関係について、農民の実際の行動様式、心性、動機に焦点を当てた視点から、農民が果たした役割について研究したいと考えている。

 

■結論の吟味

上述の研究を遂行するため,貴学法学部政治学科に入学し,中国現代政治史を専門に研究している高橋伸夫教授の研究会に入会することを強く希望する。

 

※1高橋伸夫(2002)「中国共産党と農民革命 : 研究状況と課題」法學研究 : 法律・政治・社会 (Journal of law, politics, and sociology). Vol.75, No.1 (2002. 1) ,p.167- 197

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