慶應義塾大学 法学部政治学科 FIT入試 志望理由書 提出例(添谷 芳秀研究会向け)

■議論の整理論

冷戦後の日本外交論は、その変化の過大評価と過小評価の聞を揺れ動いている。その混乱ぶりは、「普通の国」論に関する解釈に最も象徴的に表れているように思う。

日本で「普通の国」論を積極的に唱える論者の多くは、主に憲法第九条に由来する様々な制約を問題にし、それに縛られる日本外交は「普通の国」の役割を全く果たし得ていないという現状認識に立っている。それに対して、一般的に諸外国においては、「普通の国」化とは、日 本が軍事力の拡大も含めて、伝統的な安全保障の領域における役割の拡大を求める政治的変化として理解されている。それは、隣国の韓国や中国における日本外交論では圧倒的に主流の見方であり、さらにその他のアジア諸国や欧米諸国における多くの考察も、必ずしも例外ではない。

「普通の国」論に対する変化の契機は、冷戦後日本外交の変化の内実そのものである。1990年代日本外交の変化の原点は、1991年の湾岸戦争への不適合に対するトラウマにあった。そして、その変化は、自衛隊の国連平和維持活動(PKO)へ の参加にみられるように、基本的に国際主義的傾向の強いものであった。それは、諸外国の「普通の国」論が一般的に示唆する国家主義的衝動に基づく変化などではなかった。

第二に、1990年代半ばに進行した日米同盟の「再確認」に関しても指摘できる。しかし、こうした冷戦後日本外交の変化をめぐる国内政治状況は混乱していた。「普通の国」論を唱える多くの政治アクターは、冷戦後の国際政治情勢の変化に対応するために、憲法に由来する従来の制約を乗り越える必要性を感じている点では共通していた。しかし、なぜそれ が必要なのかという問題設定においては、相容れない国際主義的な立場と内向きの問題設定から出発する保守的衝動が存在していた(*1)。

 

■問題発見

ここで,1990年代の日本外交における「普通の国」論の意識の変化に対する課題について改めて考えてみたい。

 

■論証

国際平和協力への自衛隊参加、および日米同盟の「再確認」を以上のように整理すると、日本外交の「普通の国」化とは、安全保障政策の最低限の基盤を整備する過程であったということができるだろう。そうだとすれば、そのことだけをもって冷戦後日本外交の変化を意義づけることは、実態の半分も説明していないということになる。

「普通の国」化は、本来それ自体が目的ではなく、何らかの外交目標を達成するための前提に過ぎないともいえるからである。その点で示唆的なのが、「普通の国」化が進行するとともに1990年代後半に登場した、人間の安全保障である。

「普通の国」化の実態は、何か大きな外交路線の転換を目指すというよりは、むしろ冷戦後の現実に直面して最低限の役割を模索しようとするものであった。その意味で、1991年の湾岸戦争の際に実質的に何もできなかったことをトラウマとする変化であったのである。そ して、その変化を促した基本的な動機は、むしろ国際主義的なものであった。戦後日本外交の変化に関する以上のような体系的理解が、日本の政治や社会のコンセンサスになっていたかといえば、決してそうではなかった。それどころか、国連平和維持活動への自衛隊の参加や、日米同盟の「再確認」を、日本の「主体性」確保を自己目的化するかのような保守的な衝動から理解し、利用しようとする 日本の政治的アクターは、必ずしも少なくはなかった。そして、彼らにとっては、究極的には憲法改正につながる変化こそが「普通の国」化のあるべき姿であり、人間の安全保障は、そうした保守的な問題意識とは何ら接点をもたない、「浮ついた」外交に他ならなかった。

したがって、「普通の国」化を国家主義と同一視する見方は、冷戦後日本外交をめぐる囲内政治理解において誤りを犯している。保守的衝動は、それが変化の主流を形成しているからではなく、国際主義的動機に基づく変化のなかで一定の役割を果たしているから重要であると再認識すべきである(*1)。

 

■結論

そこで,国際主義的動機に基づく変化の中で「普通の国」論を捉えなおし、国際社会における日本外交に求められている役割について研究したいと考えている。

 

■結論の吟味

上述の研究を遂行するため,貴学法学部政治学科に入学し,国際政治学、アジア太平洋の国際関係や日本外交を専門に研究している添谷芳秀教授の研究会に入会することを強く希望する。

 

※1添谷芳秀(2010)「『普通の国』論再考 : 冷戦後日本の外交と政治」法學研究 : 法律・政治・社会 (Journal of law, politics, and sociology). Vol.83, No.3 (2010. 3) ,p.21- 40

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