慶應義塾大学 法学部政治学科 FIT入試 志望理由書 提出例(岡山 裕研究会向け)

■議論の整理論

近年、安定した民主主義体制を持つと考えられている先進国においても、ポピュリズムや、人種や宗教といった属性に基づく差別意識、不寛容、そして攻撃的 姿勢が政府の内外で目立つようになっている。

イギリスのヨーロッパ連合からの離脱(ブレクジット)決定にいたる政治過程や、アメリカ合衆国(以下アメリカ) におけるドナルド・トランプの大統領への当選やその政権運営などが、その象徴的な例として挙げられている。アメリカについては、長年の法的な人種差別も あって民主主義の歴史が決して長いともいえないことから、民主主義から競争的権威主義体制に移行する可能性がどの程度あるのかといった議論もされている。

そういった中で、多くの法案をめぐって二大政党の間で対立するようになっている。しかも両者が拮抗しているため、少数党が次の選挙で多数党に返り咲こうと、徹底的に多数党の足を引っ張って成果を上げさせまいとし、多数党は少数党をなるべく排除して立法しようとするということが生じているのである。それに対して、今日各政党の背後には、イデオロギーを共有しつつも多様な利害を代表する利益団体がついている。

また、今日の大統領は連邦議会が立法できないのに業を煮やして、あるいはそのことを利用して、行政機関に大統領令や大統領覚書といった法執行に関する命令を出して、重要政策について実質的な変更を行うようになっている。しかし、これらはいずれも度が過ぎれば、訴訟によって違法だと判断される恐れがある。

連邦政府が「決めない」政府として作られたことが、近年の政治的・社会的分断にもたらす影響は両義的なものだと考えられる。超多数派の賛成票が得られなければ立法はできないから、左右いずれの勢力がそれぞれの掲げる極端な政策を実現しようとしても、それは困難である。他方で、それによって必要性の明らかな政策であってもなかなか策定されないだけでなく、二つの勢力がこの膠着状態を互いに相手の責任と考える結果、両者の反目がさらに強化されていく可能性がある(*1)。

 

■問題発見

ここで,連邦政府が「決めない」政府として作られたことが、近年の政治的・社会的分断にもたらす影響に対する課題について改めて考えてみたい。

 

■論証

連邦政府が持つ制度的特徴として、現下の政治対立を一方では促進し、他方ではその効果を抑制するという点が挙げられる。

もう一つの特徴として、連邦政府のあり方それ自体が民主主義に対する挑戦となっている。合衆国憲法を中心とする連邦政府レベルの政治制度は、多数決主義的な民主主義に対して消極で、連邦政府が国全体を積極的に統治することも想定されていなかった。そのために、民主化が進み、連邦政府に期待される役割が大幅に拡大した今日でも、多数決主義的な政策形成が構造的に制約されているとみられる。

また、重要と思われるのが、各州の動向である。「決めない」・「決められない」連邦政府の特質を考えるとき、 合衆国憲法に基づく政府内の権力分立と連邦制の構造にもより目が向けられるべきである。「決めない政府」としてデザインされたのは、重要な事柄のほとんどは各州で決めるべきだと考えられたからである。今日では、二大政党が全国規模では拮抗しているものの、大半の州ではいずれかの政党が明らかに優勢となっている。そのため、連邦政府の膠着状態とは対照的に、銃規制、性的少数者の権利、不法移民の扱い、そして環境保護といった、重要かつ論争的 な争点について積極的に立法がなされ、その結果、州間の政策的偏差が拡大しているのである。また社会政策や教育政策のように、連邦レベルの政策であっても 州に執行が任されている場合、やはり多様性が生じている。

したがって、連邦政府が「決めない」政府として作られたことが、近年の政治的・社会的分断を生み出している中で、今後、連邦政府のあるべきあり方を検討し、国際社会に与える影響を検討すべきである(*1)。

 

■結論

そこで,各州の政策の多様性を踏まえた視点から二大政党制を検討し、アメリカ民主政における連邦政府の位置づけと新たな役割について研究したいと考えている。

 

■結論の吟味

上述の研究を遂行するため,貴学法学部政治学科に入学し,アメリカ政治史や現代アメリカ論を専門に研究している岡山裕教授の研究会に入会することを強く希望する。

 

※1岡山裕(2018)「報告一 : 決めない政府から決められない政府へ? : アメリカ民主政における連邦政府の位置づけと現代政治への含意」法學研究 : 法律・政治・社会 (Journal of law, politics, and sociology). Vol.91, No.12 (2018. 12) ,p.92- 105

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