慶應義塾大学 法学部政治学科 FIT入試 志望理由書 提出例(竹ノ下 弘久研究会向け)

■議論の整理

管理職への移動のメカニズムは,大企業と中小企業で大きく異なる。

第一に、大企業の管理職については,出身階層の影響力が顕著にみられるが、中小企業の管理職では出身階層による格差が小さく流動的である。第二に、教育達成の効果も,企業規模による違いが顕著である。第三に、労働市場における制度やキャリアの影響を見ると,大企業では、新卒一括労働市場の中で学校から職場への移行を果たすこと、その後も同じ企業でキャリアを形成することが、管理職への移動を促進していた。他方で中小企業では,新卒一括採用からの逸脱は, 必ずしも管理職への移動を抑制しておらず、勤続年数や転職回数の効果を見ても、外部労働市場型の流動的な労働市場の中でキャリアを形成し、管理職へと移動していく状況が見られている。

出身階層や教育達成による管理職到達の格差が,大企業と中小企業で異なることからは,管理職は同じ職種であったとしても,企業規模によって日本の階層構造の中での位置づけが異なっていることを示唆している。企業規模による賃金格差や雇用の安定性の違いから,多くの人は,中小企業よりも大企業で管理職として働くことを望ましいことと捉えていると思われる。そうした違いから、中小企業での管理職は、出身階層、教育達成、職業キャリアの点から流動性が高く、大企業の管理職は中小企業よりもそれらの流動性が低い。大 企業の管理職における流動性の低さは、出身階層や教育達成による不平等を一層大きなものとしている。

以上のことから、管理職への移動に関する課題には、企業規模、世代間移動、世代内移動などが要因として考えられる(*1)。

 

■問題発見

ここで、管理職への移動にかかわる世代間移動と世代内移動に対する課題について改めて考えてみたい。

 

■論証

管理職は,企業における昇進を経てその地位へと到達することから、日本の労働市場の制度慣行に大きく埋め込まれていると考えられる。

大企業中心に形成された企業を基盤とする内部労働市場や、大企業と中小企業における格差、二重構造が、管理職への移動に大きく影響する労働市場の制度として注目すべきである。例えば、内部労働市場を基盤とする諸制度は,新卒一括採用や採用選考時に求職者の出身学校をスクリーニングのために重視するなど,日本の学校から職場への移行のあり方も大きく枠づけてきた。

管理職への移動は、大企業と中小企業という労働市場の分断構造と、労働市場における移動を媒介する諸制度の中に、大きく埋め込まれている。日本における労働市場の制度状況からは、職種だけでなく企業規模は、日本の不平等構造を作り出す重要な要因となっている。

しかし、労働市場における男女の不平等の問題や、女性の就労率の増加などもふまえると、男性だけを対象に不平等を論じることは一面的であり,女性も含めて両者を比較することは、非常に重要な課題である。

したがって、今後、管理職への移動にかかわる世代間移動と世代内移動に関する男女比較とその制度の果たす役割を検討すべきである(*1)。

 

■結論

そこで,管理職への移動にかかわる世代間移動と世代内移動に関する男女比較をふまえ男女両方が活躍できるような活用フレームワークを考案し,男女間の管理職への移動の効率的な制度につながる方法論について研究したいと考えている。

 

■結論の吟味

上述の研究を遂行するため,貴学法学部政治学科に入学し,社会階層論や比較社会学を専門に研究している竹ノ下弘久教授の研究会に入会することを強く希望する。

 

※1竹ノ下弘久(2018)「管理職への到達をめぐる不平等 ─ 世代間移動と職業キャリアの視点から」日本労働経済雑誌

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