■議論の整理論
非典型担保、とくに譲渡担保の法的性質をめぐっては種々の考え方が提示されてきたが、 いずれも、なるべく担保権の実質に沿う解釈がなされるべきである、という方向性をもつ点では今日ほぼ 一致したものがあるといえる。このように担保権的構成による解釈が深化していくと、所有権移転時期に着目する従来の非典型担保の定義や区分自体、意味を失う ことになる。
私的実行型担保定立の契機としてとして従来より指摘されている「競売手続の回避」自体は、流抵当特約や仮登記担保でも達成しうるものであり、積極的な意義づけを示すものとはいいがたい。不動産譲渡担保には、後順位担保権者を排除することで円滑に私的担保権実行をなしうるという独自の意義が存しうる。
問題は、私的実行型担保たる譲渡担保をどのように解釈し運用していくべきかである。私的実行は、債務者その他の利害関係人の利益が害される危険性を有するため、公正な換価手続となるよう、私的実行の規範を定立する必要があると思われる(*1)。
■問題発見
ここで,不動産譲渡担保についての解釈指針における課題について改めて考えてみたい。
■論証
非典型担保が担保権であるとして抵当権と同様の扱いが目指されるとなれは、両者の関係をどのように理解すべきかが問題となる。そこで、担保権実行として第三者への処分がなされてしまう前の段階に、債務者等の利益を保護する手続保障か図られるべきという ことである。とりわけ第三者への処分後の債務者の権利が否定されているわが国の判例法 のような態度を維持するのであればなおさらである。暴利手段として用いられてきたという、譲渡担保が潜在的に有する危険性を十分意識しつつ、債権者の処分 には、担保権の実行 であることに相応した手続を求めるべきと考える。
一方、抵当権をめぐる民法典の担保法制の差異ゆえに存在意義を異にする動産と不動産 の譲渡担保は、担保権と位置づけて定義づけを行うならば、別個に規律されるべきことになるはずである。 動産譲渡担保は、動産抵当の実現という民法典上の制度の不備を補完 する意義をもちうるが、不動産譲渡担保にはそうした事情がないのであり、抵当権との関係 を別の視点から明確にする必要があるからである。
したがって、これら担保権実行の処分に先だつ事前の手続的規範整備の必要性に加えて、処分後の譲受人と債務者の関係を主観的要因によって調整 することも、一定の範囲 において認められるべきものと考える。さらに、担保としての具体的効力を導くのに資する形 の性質論を検討すべきである(*1)。
■結論
そこで不動産譲渡担保をめぐる私的実行型担保のフレームワークを検討することで、譲渡担保の法的性質について研究したいと考えている。
■結論の吟味
上述の研究を遂行するため,貴学法学部法律学科に入学し,民法を専門に研究している田高寛貴教授の研究会に入会することを強く希望する。
※1田高寛貴(1998)「非典型担保法の再考」私法 1998 (60), p209-215
コメントを残す