慶應義塾大学 法学部法律学科 FIT入試 志望理由書 提出例(武川 幸嗣研究会向け)

■議論の整理論

民法五四五条一項ただし書における解除の対第三者効力に関する諸議論については、周知の通りであるが、その特色を要約すれば、「解除と第三者」に関する従来の議論の特色は、第一に、遡及効の有無を中心とする解除の効 果論から演繹的に第三者保護を導こうとする傾向が見受けられたこと、第二に、これと関連して、効果の共通性ないし 類似性に基づき、「無効・取消しの第三者」に関する議論が主要な比較対象となっていたこと、第三に、問題となる第三者の類型は、主として不動産の第三取得者であったことに集約される。

その概要を示せば、次のとおりである。これまでの議論の主な展開手法は、はじめに解除の効力につきその法的性質を確定した上で、第三者保護の法律構成を論理的・演繹的に導いていく、というものであったように思われる。すなわち、伝統的なドイツ 法学説を範にとりつつ、同条一項本文の原状回復につき直接効果説・間接効果説・折衷説いずれが適切かを総論 として検討しながら、解除権者と第三者の関係を対抗関係または無権利構成のいずれととらえるかを論じていく、 という手法である。

近年では、ドイツ法上の議論の 発展をうけて、解除を、契約関係を維持して履行過程から清算関係への転換・変容を図る法的手段ととらえ、原 契約の枠組の中で、巻き戻しに向けた妥当な権利義務関係を規律しようと試みる、契約関係巻き戻し説が有力に 唱えられているが、これも、対第三者効力の観点に限定すれば、物権変動の遡及的消滅を認める必要はないという点に還元できる (*1)。

 

■問題発見

ここで「解除と第三者」の観点から対第三者効力の有効性に関する課題について、改めて考えてみたい。

 

■論証

解除の効果につき一律に債権的効力を貫徹させることは、第三取得者保護にとっては効果的であるとしても、 果たして他の第三者とくに一般債権者・差押債権者との関係においても妥当性を維持しうるのかが疑間となる。解除権者の債権はこれらの債権者と競合し、債権者平等の原則に服するとすれば、先取特権との均衡を失し、仮に「優先効ある特別な債権」と捉えたとしても、その優先的効力の法的根拠がさらに問われることになる。

また、少なくとも対第三者効力にとっては、遡及効の有無より、解除の効果として生じる権利の遡及的消滅または回復をもって第三者に対して対抗することができるか否か、が重要となってくる。遡及効の承認-無権利の法理外観法理による保護または、遡及効の否定-狭義の対抗関係の図式は決して必然的ではなく、遡及効を 認めても一定の第三者に対してはその効果が及ばないと構成することも可能であり、また遡及効を否定しても、原状回復として生じる権利関係を第三者に対して主張しうるのか、できるとすれば要件 は何か、をあらためて問う必要がある。

一方、解除の効果を純然たる債権的効力と捉えるな ら、一律に第三者に対する効果は否定される。第三者の 範囲や要件が問題となるのは、解除の効果が一定の場合において第三者に対しても及びうることを前提としている。

したがって、解除の効果に関する対抗の可否が、どのような第三者に対する関係において何 が問題となるか、その対抗可能性または対抗不能は、それぞれの第三者類型においていかなる法的意義を有するのか、要件についてはどう考えるべきか、について今後とも今後とも検討すべきである(*1)。

 

■結論

そこで先取特権の追及効と、優先権ないし優先的効力の視点を通じて、解除の対第三者効力における民法の役割について研究したいと考えている。

 

■結論の吟味

上述の研究を遂行するため,貴学法学部法律学科に入学し,民法を専門に研究している武川幸嗣教授の研究会に入会することを強く希望する。

 

※1武川幸嗣(2005)「解除の対第三者効力論 (一) : 売主保護の法的手段とその対第三者効」法學研究 : 法律・政治・社会 (Journal of law, politics, and sociology). Vol.78, No.12 (2005. 12) ,p.1- 68

 

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