慶應義塾大学 法学部法律学科 FIT入試 志望理由書 提出例(内藤 恵研究会向け)

■議論の整理論

労働契約とは基本的に、労使双方が互いに給付義務(労務提供義務、賃金支払義務)を負う双務有償契約の一つである。したがって労働契約上、労働者が使用者に対して負う義務としては、第一に労務提供義務が挙げられる。

しかしながら労働者が労働契約上負う義務については、労務提供義務と並んで付随的義務の存在が論じられてきた。労働者は主たる給付義務以外のいかなる義務を労働契約上負っているかについては、我が国でも学説上議論がなされている。労働法学における労働者の競業避止義務や秘密保持義務は、この付随的義 務の問題とされている。我が国には、労働者がこの付随的義務を負う根拠となる労働法上の実体規定が存在しない。その為、主たる労務提供義務以外にいかなる義務を労働者は負っているかという点については、学説上様々に議論されてきた。

その例として、労働者の付随的義務と呼ばれる義務の内容が、具体的にはどのように理解されるかは、判例の進展のなかで各々の分析がなされている。特に付随的義務は、社会的要請に応じ様々な解釈を生み出し得る柔軟な存在である。言い換えれば、労働契約関係における労働者の付随的義務は、労働の特質に基づき様々な内容と性格の義務の集大成として形成されているのである(*1)。

 

■問題発見

ここで労働契約上の付随的義務が誠実義務に与える影響に関する課題について改めて考えてみたい。

 

■論証

現在具体的な形で付随的義務の一環として挙げられているものには、告知・説明義務、秘密保持義務、競業避止義務などがある。今日の社会では、これら付随的義務は、労働契約上の義務を考える際に無視できない存在となっている。

また現在、我が国においても内部告発者保護法制を求める機運が高まっているが、この問題も、労働契約の視点から論ずるならば、労働契約上労働者が負う秘密保持義務と抵触する問題である。内部告発という行為をすることにより、一方で当該労働者は、長期的信頼関係である労働契約において当人に与えられていた使用者からの信頼を殿損したという側面があると言えよう。

このように企業社会における機密保持の要請と、労働者の果たすべき社会の公的利益に対する貢献とをいかに調整するかという問題は、労働契約上の労働者の義務 との関係では簡単には解決できない。現代社会における労働契約上の権利と義務の構造を明らかにすることは、このような現 代社会における労働問題の解決に資するものと考えられる。労働契約の付随的義務とはどのように理解されるか、 その内容を明らかにすることは労働契約の本質を把握する場合に重要な課題である。労働契約に限らず、契約締 結に際して契約当事者が、あらゆる個別的事態を想定し契約条項に明定することは不可能である。

したがって、今後の課題としては、我が国において進展している不正競争防止法や公益通報者保護制度の整備に伴う変化を取り込んだかたちで、現代社会における労働契約上の労働者の義務について検討しなければならない。このように労働法における労働者の秘密保持義務は、情報の有する価値が高くなった現代社会においては、特 に不正競争防止法との関係で極めて厳格に解される傾向がある。このように企業社会における機密保持の要請と、労働者の果たすべき社会の公的利益に対する貢献とをいかに調整するかという問題は、労働契約上労働者が負う義務との関係では簡単には解決できない問題であるため、今後とも検討すべきである(*1)。

 

■結論

そこで機密保持と公益通報者保護制度の権利調整の研究を通じて我が国における労働者権利保護の役割について研究したいと考えている。

 

■結論の吟味

上述の研究を遂行するため,貴学法学部法律学科に入学し,労働法、社会保障法を専門に研究している内藤恵教授の研究会に入会することを強く希望する。

 

※1内藤恵(2003)「労働契約における労働者の誠実義務 : イギリス雇用契約上のimplied terms議論を中心として」法學研究 : 法律・政治・社会 (Journal of law, politics, and sociology). Vol.76, No.11 (2003. 11) ,p.1- 38

 

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