慶應義塾大学 法学部法律学科 FIT入試 志望理由書 提出例(大屋 雄裕研究会向け)

■議論の整理論

近代とは「見知らぬ他者」を信頼することのできる社会のことであると、しばしば主張 されてきた。だがその信頼が国家による統制に依存していたこと、国家の手によって問 題のある人物・危険人物があらかじめ排除されていたからこそ可能になったものであることもまた、すでに繰り返し指摘されてきたと言っていいだろう。そのような意味での国家による安全が十分に成り立っていない状態から、他者への基本的信頼を生み出して社会を成り立たせることはできるのだろうか。見知らぬ他者とのあいだでも安心して契約関係を取り結ぶことのできるような効率の高い社会のあり方を実現することは可能なのだろうか。

その解決策として、「個人信用スコア」とそれを国家規模で結合した「社会信用システム」を理解することができる。いずれも現在、中国社会において急速に発展しつつあり、さまざまな論者からの注目を集めている。

この「個人信用スコア」については、以下の課題がある。それは、個々の事業者による対応の基礎として用いられる場合にはむしろ同等のものを同様に扱うという正義の原則にかない、反差別的なものとして評価できると判断する一方、その範囲を逸脱して懸念される状況が存在する。その最大の問題としては、国家が統一的な「社会信用システム」へと成長させる場合を挙げられる(*1)。

 

■問題発見

ここで,「個人信用スコア」を国家が統一的な「社会信用システム」へと成長させる際の課題について改めて考えてみたい。

 

■論証

「個人信用スコア」とは、それぞれの個人の持つ信用力―どのくらい契約を確実に履行するか、債務を返済するか、道徳的に正しいとされる行為を選択するかといった要素を可視化し、一定の数値として示すシステムのことである。

「個人信用スコア」を国家が統一的な「社会信用システム」へと成長させる際には以下の課題が挙げられる。

第一に、「個人信用スコア」とそこに含まれるビッグデータの活用・プロファイリングについて、それ自体を問題として排除する根拠は乏しい。問題が発生し得るとすれば、まず、 寡占・独占の発生によって競争的環境が失なわれ、評価の多元性とそれに基づく同種サービス間の移動可能性が失われた場合であり、これに対しては競争法的な規制によりこのような状況の発生を防止することが第一義的な対策として想定されるだろう。さらに、そのように競争的な状況であっても発生し得る「合理的な差別」に対応するためには、その基礎となる疑わしい根拠を用いることに対して公的な規制を加えることが想定される必要が あるだろう。ただしここで求められるのは無差別であること、差別的な取り扱いをしていないことの証明であり、いかなるデータをどのように用いているかをすべて明らかにするような意味における透明性ではない。このため求められる手段も、差別に用いられると疑われる属性に限定した中立性の証明や、データ利用法に関する情報公開、第三者による監査などが想定されるべきだろう。

第二に、国家という独占的な主体がこれらの技術を用い、全社会を包含する社会信用シ ステムを構築することは、移動・離脱の可能性を保障しない独占状態を法的に作出するこ とを意味しており、市民の自由と平等に基礎を置く近代社会において認められるべきでは ない。信用の公的評価に至らないビッグデータの利用についても市場的な解決に限界があることを前提として、民間における利用に比して厳しい制約のもと、透明性を確保する形 に限定されることが望ましいと考えられる。

したがって、国家が「個人信用スコア」を基に社会信用システムを構築する際には、安全性や中立性を確保した社会的基盤の整備を検討するべきである(*1)。

 

■結論

そこで,「個人信用スコア」を社会信用システムとして活用する際の課題を検討し、日本国内に導入する場合の期待される法制度の役割について研究したいと考えている。

 

■結論の吟味

上述の研究を遂行するため,貴学法学部法律学科に入学し,法哲学を専門に研究している大屋雄裕教授の研究会に入会することを強く希望する。

 

※1大屋雄裕(2019)「個人信用スコアの社会的意義」情報通信政策研究 2 (2), p15-26

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