慶應義塾大学 法学部法律学科 FIT入試 志望理由書 提出例(杉田 貴洋研究会向け)

■議論の整理論

一般に、募集株式の発行等の払込金額について、市場価格の存在する会社では、原則として払込金額決定時の 市場価格(時価)を基準として決定すべきであるということに、現在、ほぼ争いはない。議論があるのは、第三者割当の方法で募集株式の発行等が行われる場合の払込金額についてである。具体的に は、次の二つの場面が問題となる。 一つは、異常・一時的に市場価格が高騰した状況下における第三者割当、もう一つは、救済的資本提携を目的とする第三者割当の実施が発表されて市場価格が上昇した状況下における第三者 割当についてである。

いずれについても、高騰後・上昇後の市場価格を基準とすべきか、高騰前・上昇前の市場 価格を基準とすることができるかをめぐって対立がある。前者の問題(異常・一時的高騰の場合)で、高騰前の市 場価格を基準とすることを認める考え方は、主として、市場価格が当該企業の客観的価値を反映しているか否かという点を根拠としている。こうした考え方によれば、会社法が求める払込金額の公正性は、株式(ないし企業) の客観的価値に合わせることであると理解することになろう。また、後者の問題(救済的資本提携による上昇の場 合)で、上昇前の市場価格を基準とすることを認める考え方は、主として、シナジ lの配分という観点から、これを説明する。すなわち、こうした局面で市場価格が上昇するのは資本提携によるシナジ―が株価に反映したものであり、第三者割当を実施しようとする会社側から見れば提携相手である引受人の「貢献」により株価が上がったものであり、上昇前の市場価格を基に払込金額を決め、その結果事後に引受人に利得が生じても不公正ではないとする (*1)。

 

■問題発見

ここで第三者割当の募集株式の発行等における払込金額に関する課題について改めて考えてみたい。

 

■論証

会社法は、新旧株主間での富の移転を回避する趣旨で、公正な払込金額による募集株式の発行等の実施を求めていると考えられる。同様に、有利発行の場合に、株主総会決議を要す るのは、有利発行により富の移転を生ずることが予想される場合に、これによって経済的に不利になる既存株主 に、事前に承諾を求めることを要する趣旨であると考えられる。つまり、会社法は、ここでは、払込金額をめぐる新旧株主間の経済的側面での利益調整をしているものであって、払込金額が株式の客観的価値と合致すべきといったことを目的とするものではないと考えられる。

一方、第三者割当の方法による募集株式の発行等における払込金額の決定について、裁判実務においては、日本証券業協会が定める「第三者割当増資等の取扱いに関する指針」に沿って行われているかが問われることが ある。同指針に準拠していれば差止の対象としないとの基準が裁判実務で確立したよう であると言われることもある。しかし、学説には同指針に拠って払込金額の公正性を判定する傾向に否定的な見方が多いようである。そこで、第三者割当の場合の払込金額の公正性について検討し、同指針に沿って決定された払込金額が会社法の趣旨に適うものと言える。

同指針自体は、会社法の要求する払込金 額の公正性についての解釈を示すことを直接の狙いとするものではない。ここで会社法は、新旧株主間の利益調整を図り、既存株主の利益を守ることを目的としていると考えられる。したがって、第三者割当の方法で募集株式の発行等が行われる場合の払込金額について、指針及び会社法の目的を踏まえ今後とも検討すべきである (*1)。

 

■結論

そこで第三者割当の方法で募集株式の発行等が行われる場合の払込金額に関する研究をを通じて会社法における利害調整機能の役割について研究したいと考えている。

 

■結論の吟味

上述の研究を遂行するため,貴学法学部法律学科に入学し,商法を専門に研究している杉田貴洋教授の研究会に入会することを強く希望する。

 

※1杉田貴洋(2006)「第三者割当の募集株式の発行等における払込金額」慶應の法律学 商事法 : 慶應義塾創立150年記念法学部論文集 (2008. ) ,p.143-166

 

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