慶應義塾大学 法学部法律学科 FIT入試 志望理由書 提出例(北澤 安紀研究会向け)

■議論の整理論

EU法上認められている「相互承認原則」が近時のEUの国際私法理論に影響を与えつつある。EU法上の「相互承認原則」の適用範囲が拡大していくにつれ、従来の国際私法による準拠法決定のアプローチとは別に、構成国相互間での裁判及び法律関係の承認という方法がより重視されるようになってきている。それに伴い、EU構成国の中でも特に、ドイツやイタリア、フランス等の国際私法学説において、この承認という方法が従来の国際私法による準拠法指定の方法と競合する方法として当然に認められてよいものなのかどうかが議論されるようになってきている。

2001に Jayme と Kohler の論文が公表されて以来、この承認という方法について論じる文献が相当数出てきている。このような議論を今かりに「承認論」と 呼ぶならば、「承認論」がEUで行われるようになった背景には、EU法上の原則として「相互承認原則」が認められ、その適用範囲が拡大されるようになってきたことがある

そして、この「相互承認原則」の拡大がEU構成国の国際私法理論に対して一定の影響を及ぼしつつあるとの 指摘が注目される。すなわち、このような「相互承認原則」の適用範囲の拡大とともに、EUにおいて、法の統合を進める際に使われる手法として、承認という方法が、従来の抵触法的手法と競合する手法として注目され始 めている。それと同時に、そもそも承認という手法が法統合を進める際の有用な手段たりうるのかという観点か ら、承認という方法の意義、承認の対象、承認の要件、そして、承認という方法を用いることの問題点等が議論 されるようになってきている。そして、このようなEUの「承認論」における議論の争点は、法的状況の承認を認めるべきか否かという点にあるといえる(*1)。

 

■問題発見

ここで,EUの「承認論」において法的状況の承認を認めるべきか否かを検討する際の課題について改めて考えてみたい。

 

■論証

まず、EUにおいて「承認論」が行われる発端となったEU内部における相互承認原則の確立及びその適用範囲の拡大について概観した上で、つぎに、その相互承認原則の拡大を受けて、EUの国際私法上「承認論」としてどのような議論が行われるようになっているのだろうか。「相互承認原則」については、Cassis de Dijon 判決以降、主として、EUの民事司法協力の分野においてそれが強調されているのをはじめ、最近では、欧州司法裁判所の先決裁定において、物やサービスの自由移動の場面のみならず、会社の法人格の承認や氏の承認の場面にまで、その原則の適用が拡大されるようになってきている。EUにおける「相互承認原則」の拡大に伴って生じた議論であるEU国際私法上の「承認論」は、様々な問題を提起する。

したがって、一構成国で適法に創設された法的状況を他の構成国は当然に承認すべきなのか否か、あるいは、他の構成国はあらたに国際私法による準拠法の指定を行い、再度その法的状況を評価すべきなのかという問題設定がされているのである。以上のような問題状況を踏まえると、そもそも、この原則が国際私法や国際民事手続法の方法論から見てどこに位置づけられるべきものなのかという点について議論が不十分である。

したがって、法的状況の承認が認められる場合には、法的状況の効力を規律するのは、本源国法なのか、承認国の抵触規則によって指定される法であるのかについても議論の余地がある。この点については、承認国の抵触規則によらせるとする見解の方が有力なようである。承認論というのは、結晶化された法的状況に基づき当事者が正当に予見していたことを理由に、その法的状況を承認し、その有効性を促進しようとするものである。そして、法的状況の効力の問題は、法的状況の成立の問題と分離可能であるとも考えられ、今後さらに検討すべきである (*1)。

 

■結論

そこでEU諸外国の法的状況の近年の承認状況を踏まえ、EUの「承認論」の位置づけについて研究したいと考えている。

 

■結論の吟味

上述の研究を遂行するため,貴学法学部法律学科に入学し,国際私法を専門に研究している北澤安紀教授の研究会に入会することを強く希望する。

 

※1北澤安紀(2015)「EU国際私法における承認論」法學研究 : 法律・政治・社会 (Journal of law, politics, and sociology). Vol.88, No.1 (2015. 1) ,p.147- 176

 

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