慶應義塾大学 法学部法律学科 FIT入試 志望理由書 提出例(亀井 源太郎研究会向け)

■議論の整理論

2016 年春から、複数回、共謀罪、あるいは、それにかわる犯罪類型を創設 する法案が国会に提出される見込みであるとの報道がなされた。また、同年 8 月 26 日には、朝日新聞が「共謀罪、要件変え新設案」と 題し「安倍政権は、『共謀罪』について、適用の対象を絞り、構成要件を 加えるなどした新たな法改正案をまとめた。2020 年の東京五輪やテロ対策を 前面に出す形で、罪名を『テロ等組織犯罪準備罪』に変える。」と報道した。

共謀罪等の創設につき、米国法における知見を用いて検討を試みたところ、以下の5点の課題が存在する。第一に、共謀罪等の創設は内心処罰の禁止に反するものとまではいえない点である。第二に、共謀罪等による早期介入は現実には容易でない点である。第三に、旧法案は、未遂処罰・予備処罰のいずれかを欠くにもかかわらず共謀罪の対象となるという「不均衡」を生ぜしめる点である。第四に、この「不均衡」を超克しようとする際、犯罪目的グループの存在が有する危険性に着目する米国法の議論が参考になる点である。第五に、もっとも、この危険性に着目しても旧法案には賛成し得ない点である(*1)。

 

■問題発見

ここで,「テロ等組織犯罪準備罪」に代表される共謀罪等を創設する際の課題について改めて考えてみたい。

 

■論証

米国法に倣えば、超克の一つの可能性は、「犯罪目的でのグループの存在は、 直接予見される犯罪と、そうでない犯罪の双方に対する継続的な活動の中心を 提供する」というテーゼを認めることにある。また、米国では、コンスピラシーとは、コモン・ロー上、「2名以上の者による、 不法な行為、もしくは、不法な手段による合法な行為を、なすための結合」 と定義され、諸法域の制定法も、しばしばこの定義に従ってきた。

「テロ等組織犯罪準備罪」についての暫定的評価にあたり、「新テロ対策」、「テロ等組織犯罪準備罪」として報じられた「法案」がある。朝日新聞によれば、同紙が「テロ等組織犯罪準備罪」と呼ぶ犯罪類型は、大要、以下のようなものである。第一に、旧法案において用いられた「団体」を、「組織的犯罪集団」とする。第二に、旧法案において用いられた「共謀」を「2 人以上で計画」とする。第三に、「犯罪の実行のための資金または物品の取得その他の準備行為」を要求する。

仮に、このような法案が提出されるとすれば、その審議に際しては、以下のような視点が必要になる。 まず、「組織的犯罪集団」という 文言により適用の対象を当該グループの存在が有する危険性が明確な場合に限定しようと試みているものと整理されるところ、この試みの成否が論じられなければならない。その際、「目的が 4 年以上の懲役・禁錮の罪を実行すること にある団体」の存在が、そのような危険性を基礎付けるかが問題となる。次に、第二の点について、「共謀」という、従来多義的に用いられてきた文言にかえて「2 人以上で計画」という文言を用い、「テロ等組織犯罪準備罪」が内心を処罰するものではないことを明確化しようと試みていると考えられる。さらに、第三の点について、このような文言は、内乱等幇助罪(刑法 79 条)における「兵器、資金若しくは食糧を供給し、又はその他の行為」との文 言を想起させる。「法案」における「その他の準備行為」という文言に対して は、このような文言は不明確であって処罰範囲が無限定であるとの批判も想定 される。

しかし、既に刑法典が「その他の」という文言を多く用いていることのほか、内乱等幇助罪における「兵器、資金若しくは食糧を供給し、又 はその他の行為」という文言が、通説によれば、暴動に使用される武器・弾薬、 資金、食糧を供給・供与する行為のほか、これに準ずる行為であると限定的に解釈されることも、議論の前提とされる必要がある。したがって、「その他の」という文言 のみを捉えて包括的であり無限定であると批判することは避けられるべきであり、法案を論ずるに際しては、上記の点が踏まえられる必要があると考える(*1)。

 

■結論

そこで「テロ等組織犯罪準備罪」の新規創設に当たり、共謀罪の定義に関する役割について研究したいと考えている。

 

■結論の吟味

上述の研究を遂行するため,貴学法学部法律学科に入学し,刑法や刑事訴訟法を専門に研究している亀井源太郎教授の研究会に入会することを強く希望する。

 

※1亀井源太郎(2017)「共謀罪あるいは『テロ等組織犯罪準備罪』について」慶應法学 (Keio law journal). No.37 (2017. 2) ,p.151- 171

 

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