慶應義塾大学 FIT入試第2次選考 法学部法律学科 2006年グループ討論 解答例

2006年度FIT入試第二次試験概要(法律学科)

3.グループ討論の概要 •テーマ:少子化、NEET問題

  *グループ討論の順番によって上記テーマのどちらかが指定される。

  • 司会者の有無:教員が司会役を務めるが、進行とタイムキーピングのみを行い、受験生の自由な議論にまかせる。
  • 討論時間:60分

4.発表と質疑応答の概要 •発表と質疑応答時間の配分:各15分程度、合計30分

 *自分がこれまで行ってきた活動や入学後の目標と構想を自由に表現する。

※グループ討論と発表と質疑応答の順番:午後のグループ討論と発表と質疑応答は人によって順番が異なる。

 

■想定される議論

それでは、「少子化」「NEET問題」について、議論しましょう。

《「少子化問題」とは何か?》

少子化とは、出生率が低下するに伴い、将来的な人口が減少することを指します。主要先進国では、少子化が進行しているといわれています。その中でも、今後の日本の少子化と高齢化が最も進行が激しくなることが見込まれており、各所から注目を浴びています。特に少子化と高齢化が同時に進行する「少子高齢化」現象は、労働力の減少と現役世代の社会保障負担が同時に高まり、経済成長できなくなることにより、経済活動全体の活力がなくなっていくという懸念があります。それに加えて、年々平均年齢が上がっていく結婚年齢や、結婚・子育ての両立の難しさ、子育ての経済負担などにより、さらに出生率が年々低下していくことが大きな問題となっています。

そのため、結婚や出産を行いやすくする社会制度の充実や、子育てをやりやすくする方法の模索、また、義務教育や高等教育、大学教育の教育費の軽減、幼稚園・保育園の拡充など、結婚や子育てをしやすくするための方策が実現されることが望まれています。

また、少子化に伴い、現役世代の社会保障負担が増加し、一層子供を育てることができなくなるという悪循環も問題です。社会保障費の負担増加については、増税で賄うという方法もありますが、より一層経済成長をストップさせるという大きなデメリットがあります。そのため、増税により社会保障費を限りなく増加させていく方法よりは、NPOなどのボランティア活動、地域活動を活性化させ、各地域で各住民が心地よい毎日を送ることができるような社会改革が必要です。方法によっては、地域のお年寄りが地域の若者の家庭のお子さんをボランティアで昼間に預かることや、学校の終了まで子供の養育をしてくれる学童保育のような仕組みを推進していくことが望まれます。

《「NEET問題」とは何か?》

NEET問題とは、日本においては自宅に引き込もって働く意欲がないまま、毎日を過ごしているオタクというイメージがあります。ただ、本来のNEETの意味は、就業しているわけでも、就業訓練を受けているわけでも、教育を受けているわけでもない人のことです。この点、非正規雇用で生計を立てているフリーターとも違います。日本においては、「15~34歳までで、学校に通学せず、独身で、仕事にも就いていない人」という定義をする官庁もあります。NEET問題は、「自宅でぶらぶらして親のすねをかじって生活をしている無気力な若者が最近増えている」という形で問題にされることが多いといえます。非正規雇用で生計を立てようともせず、ましてや正規雇用で社会的な責任も果たそうとしないNEET問題は、考え方によっては、「親の甘やかし」である可能性もあります。子供が親を頼って自宅でぶらぶらしていても叱ることのできない親が増えているということは問題になることがなく、どうしても「無気力で仕事をしようとしない若者が増えている」という問題にすり替えられているという可能性も否定できません。その点では、NEET問題は、社会問題なのではなく、離婚件数の増加などの家庭問題の延長線上で発生原因を考えていく必要がある問題だという捉え方もあるかもしれません。

その他の考慮事項としては、現在ほど豊かではなく、核家族化していなかった時代では、「無気力で仕事をしようとしていない状態では、飢えて死んでいたためそもそも問題にさえもならなかった」という可能性もあります。そのため、NEET問題は、見方によっては、現代の日本が豊かになり、多少働かなくても食べていける人口が増えてきたために、それに甘えて働かなくなる若者もまた増えてきたという言い方も可能です。そもそも食べていくことのできない家庭では、どれほど嫌であっても、家から追い出され、働かざるを得なくなるはずだからです。そういった点では、NEET問題は、「現代日本が豊かになり、学修期間が終わって働かなくなっても食べていける時代になった」ということも可能です。ただ、経済活動をしない人口が増えることによって、確実に経済活動は停滞することが見込まれるため、NEET問題で働かない若者を社会復帰させる方策は、社会復帰のための講習会の開催など別途必要です。

まとめ

出生率の低下により人口減少が進む少子化は、現代社会で急速に進行している「少子高齢化」の一環として、結婚・子育て支援策や、学童保育、地域ボランティア活動などによる社会保障費の軽減とセットにして、解決をしていかなければいけない問題です。若者が働く気力をもたないで日々を過ごしてしまうNEET問題は、豊かになったがゆえに働かなくても生きていける現代日本社会の豊かさの反面として出てきている問題です。家庭環境から見て、NEET問題の原因を探究していくことが大切になるとともに、経済活動を停滞させないように、社会復帰のための講習会の開催など、働かない若者をうまく社会復帰させるための方策を考えていく必要があります。

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