日本大学 生物資源科学部海洋生物学科 総合型選抜1次選考 令和7年度 小論文過去問解説(海水温上昇と海洋環境)
問1【解説】
設問文
地球の温暖化がわれわれの生活に影響を及ぼすことが指摘されて久しいが、近年その影響がわれわれの目に見える様々な形で表れている。海洋環境の変化とその影響について、下記の問について調べ、それぞれ400字程度で記述しなさい。なお、記述した内容の根拠(参考にした書籍やサイト名等)も、採点者が情報を確認できるように示すこと。 問1 過去100年における日本近海の海域平均海面水温(年平均)の上昇率は、世界全体での平均海面水温の上昇率や北太平洋のそれよりも大きいことが報告されている。日本近海の平均海面水温の上昇率について調べ、その特徴を数値を提示して説明しなさい。
課題文・資料の要点
地球温暖化に伴う海洋環境変化を扱う問題である。問1は、日本近海の海面水温上昇率を、世界平均や北太平洋と比較し、数値を示して説明することを求めている。ここでは、気象庁が公表する長期変化傾向を根拠として答案を構成する。
設問条件の判定
- 制限字数: 400字程度
- 意見論述の要求: なし
- 選択テンプレート: 自由形式
- 判定根拠: 数値を用いた説明問題であり、意見よりもデータ読解が中心である。
解答プロセス
設問要件は、日本近海、過去100年、海域平均海面水温の上昇率、世界全体や北太平洋との比較、数値提示である。答案では、気象庁の海面水温長期変化傾向をもとに、日本近海の上昇率が世界平均より大きいこと、海域差があることを述べる。
問1【解答】
気象庁の海面水温長期変化傾向によれば、日本近海の年平均海面水温は、過去100年あたり約1度を超える割合で上昇しており、世界全体の平均海面水温の上昇率より大きい。世界全体では100年あたり約0.6度程度の上昇とされるのに対し、日本近海ではおおむねその2倍前後の上昇が見られる海域がある。
特徴は、第一に日本近海の上昇が一様ではなく、日本海、東シナ海、太平洋側など海域によって差があることである。第二に、黒潮や親潮、季節風、海流の変化など、地域的な海洋条件の影響を受けることである。第三に、海面水温の上昇は、漁場の移動、海藻場の衰退、南方系生物の分布拡大など、沿岸の生態系や水産業に直接影響する。
したがって、日本近海の海面水温上昇は、地球全体の温暖化の一部であると同時に、地域的に強く現れている現象である。根拠として、気象庁「海面水温の長期変化傾向」を参照した。
字数カウント: 378字
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問2【解説】
設問文
問2 近年、平均海面水温の上昇を含む気候変動の漁業への影響が顕在化している。その具体例について述べるとともに、どのような対策が求められるようになるのか、あなたの考えを説明しなさい。
課題文・資料の要点
問2は、気候変動が漁業に与える具体的影響と対策を述べる問題である。漁場変化、魚種交替、資源量変動、養殖や沿岸漁業への影響を具体例として使う。
設問条件の判定
- 制限字数: 400字程度
- 意見論述の要求: あり
- 選択テンプレート: 5STEPs法
- 判定根拠: 短い字数で具体例と対策を述べる意見論述である。
解答プロセス
- STEP1 要件確認: 設問が求める「気候変動の漁業への具体例」と「求められる対策」を両方扱う。
- STEP2 問題設定: 漁業は、従来の漁場や魚種を前提にできなくなっている。
- STEP3 論証: 海水温上昇で魚の分布や産卵場が変化し、サンマ、スルメイカ、ブリなどの漁場変化や漁獲変動が起こる。
- STEP4 解決策: 資源調査、漁場予測、漁法転換、加工流通の対応、国際管理を進める。
- STEP5 吟味: 気候変動下では、元に戻す対策だけでなく、変化を読んで適応する発想が必要である。
問2【解答】
平均海面水温の上昇は、漁業に対して魚種や漁場の変化として現れている。海の生物は水温、餌、産卵場の条件に影響されるため、水温が上がると従来多く獲れていた魚が減り、別の魚が増えることがある。
具体例として、サンマやスルメイカでは漁場が遠くなったり、漁獲量が不安定になったりしている。一方で、ブリなど比較的暖かい海を好む魚が北上し、これまで多くなかった地域で漁獲される例もある。これは漁業者の経験や既存の加工・流通体制が通用しにくくなることを意味する。
対策として、まず海水温、餌生物、資源量を継続的に調査し、漁場予測を高度化する必要がある。次に、漁業者が対象魚種や漁法を柔軟に変えられるよう、技術支援や設備更新の支援が必要である。さらに、資源が国境を越えて移動するため、国際的な資源管理も欠かせない。
気候変動下の漁業は、元に戻すことだけでなく、変化を読んで適応する産業へ転換する必要がある。
字数カウント: 391字
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問3【解説】
設問文
問3 海水温の上昇はすでに起きてしまった事象であるため、今後、われわれは新たな環境への適応を求められる。食料生産システムを維持していく上で、海面養殖業に求められる対策は何か。養殖現場での問題点を挙げ、その対応策について説明しなさい。
課題文・資料の要点
問3は、海水温上昇を前提に、海面養殖業の問題点と対応策を説明する問題である。高水温による成長不良、斃死、赤潮、病害、養殖適地の変化を扱う。
設問条件の判定
- 制限字数: 400字程度
- 意見論述の要求: あり
- 選択テンプレート: 5STEPs法
- 判定根拠: 問題点と対策を短く説明する実践的論述である。
解答プロセス
- STEP1 要件確認: 設問が求める「海面養殖業の問題点」と「対応策」を、食料生産システム維持の観点から扱う。
- STEP2 問題設定: 養殖業には、高水温に合わせた品種・場所・管理の見直しが必要である。
- STEP3 論証: 養殖生物は移動できず、高水温による斃死、病気、赤潮、餌効率低下の影響を受けやすい。
- STEP4 解決策: モニタリング、耐性品種、養殖時期の調整、養殖海域の分散、陸上養殖を組み合わせる。
- STEP5 吟味: 一つの方法に頼らず、海面養殖と陸上養殖を組み合わせてリスクを分散する。
問3【解答】
海面養殖業では、海水温上昇に合わせて養殖する種類、場所、管理方法を見直す必要がある。養殖魚や貝類は自然の魚のように広く移動できないため、高水温や水質悪化の影響を直接受けやすい。
現場での問題点として、第一に高水温による成長不良や斃死がある。水温が適温を超えると、餌を食べなくなったり、体力が落ちたりする。第二に、病原体や寄生虫が増えやすくなり、感染症のリスクが高まる。第三に、赤潮や貧酸素水塊が発生すれば、短時間で大きな被害が出る。
対応策として、まず水温、酸素量、プランクトンを常時監視し、危険が高まった時に早く対応できる体制を整えるべきである。次に、高水温に強い系統の選抜や、養殖時期の調整を進める必要がある。さらに、養殖場を一か所に集中させず、海域を分散することも重要である。
将来的には、閉鎖循環式の陸上養殖や沖合養殖も組み合わせ、環境変化に強い食料生産システムをつくるべきである。
字数カウント: 392字
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問4【解説】
設問文
問4 気候変動による生物分布への影響は、様々なかたちで生じる。食品衛生の観点からは、海産生物の喫食によって予期せぬ食中毒が引き起こされる可能性が指摘されている。今後起こり得る海産生物による食中毒について、どのような理由で発生すると考えられるのか、根拠を示して説明しなさい。
課題文・資料の要点
問4は、気候変動による生物分布変化と海産生物由来の食中毒リスクを説明する問題である。南方系有毒魚、貝毒、細菌性食中毒などが考えられる。
設問条件の判定
- 制限字数: 400字程度
- 意見論述の要求: あり
- 選択テンプレート: 5STEPs法
- 判定根拠: 根拠を示しながら発生理由を説明する問題である。
解答プロセス
- STEP1 要件確認: 設問が求める「今後起こり得る海産生物による食中毒」と「発生理由・根拠」を示す。
- STEP2 問題設定: 温暖化により有毒生物や病原体の分布が変わり、想定外の食中毒が起こり得る。
- STEP3 論証: 海水温上昇は生物の北上、プランクトン変化、細菌増殖を促し、シガテラ毒、貝毒、腸炎ビブリオなどのリスクを高める。
- STEP4 解決策: 監視、情報共有、流通時の表示、温度管理、消費者教育を強化する。
- STEP5 吟味: 過去の経験だけに頼らず、海域ごとの変化を継続的に確認する衛生管理が必要である。
問4【解答】
今後起こり得る海産生物による食中毒は、海水温上昇によって有毒生物や病原体の分布が変わることで発生すると考えられる。海の生物は水温に強く影響されるため、温暖化により南方系の魚や有毒プランクトンが北上する可能性がある。
具体例として、熱帯・亜熱帯で問題となるシガテラ毒がある。毒を持つプランクトンを小魚が食べ、それを大型魚が食べることで毒が蓄積する。海水温上昇により、これまで少なかった地域でも有毒魚が流通する可能性がある。また、有毒プランクトンの増加は貝毒にも関わる。二枚貝が毒化すれば、加熱しても危険が残る場合がある。
さらに、腸炎ビブリオのような海水中の細菌は、暖かい環境で増えやすい。夏季の水温上昇や流通時の温度管理の不備が重なると、刺身などを介した食中毒リスクが高まる。
対策として、海域ごとの有毒生物や貝毒の監視を強化し、漁業者、流通業者、消費者に情報を早く伝える必要がある。気候変動下では、過去の経験だけに頼らない衛生管理が必要である。
字数カウント: 420字



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