日本大学 生物資源科学部森林学科 総合型選抜1次選考 令和7年度 小論文過去問解説(森林の生物多様性保全)
問1【解説】
設問文
森林の生物多様性に関して、以下の3点について自分の考えを述べよ。1.世界の森林の生物多様性の現状 2.日本の森林における生物多様性が失われてきた経緯 3.日本の森林における生物多様性保全のためにどのような施策をすべきか
課題文・資料の要点
設問は、世界の現状、日本で失われてきた経緯、日本で必要な施策の三点をすべて扱うことを求めている。森林を木材資源としてだけでなく、多様な生物の生息場所、水源涵養、土壌保全、気候調整の基盤として捉える必要がある。
設問条件の判定
- 制限字数: 指定なしのため1000字を目安
- 意見論述の要求: あり
- 選択テンプレート: 5STEPs法
- 判定根拠: 現状、経緯、施策を論理的に接続し、自分の考えを述べる必要がある。
解答プロセス
- STEP1 要件確認: 設問が求める「世界の森林の生物多様性の現状」「日本で失われてきた経緯」「日本で必要な保全施策」の三点をすべて扱う。
- STEP2 問題設定: 森林面積だけが残っていても、生物多様性が守られるとは限らない。
- STEP3 論証: 単一樹種の人工林、放置された里山、外来種、シカの食害などが多様性を低下させる。
- STEP4 解決策: 多様な森林構造を回復し、保護区、間伐、広葉樹林化、獣害対策、地域参加を組み合わせる。
- STEP5 吟味: 保全と林業を対立させず、持続的な利用の中で多様性を守る。
問1【解答】
世界の森林の生物多様性は、深刻な危機に直面している。熱帯林では農地開発、違法伐採、鉱山開発などにより森林が減少し、多くの動植物の生息地が失われている。温帯や寒帯でも、森林の分断、単一樹種の植林、気候変動による乾燥化や山火事の増加が問題である。森林は単に木が集まった場所ではなく、植物、昆虫、鳥類、哺乳類、菌類、微生物が関係し合う複雑な生態系であるため、面積の減少だけでなく質の劣化も大きな問題となる。
日本の森林では、戦後の拡大造林によってスギやヒノキの人工林が広がった。木材生産を目的とした単一樹種・同齢林は管理しやすい一方、多様な植物や生物のすみかとしては限界がある。また、木材価格の低迷や林業従事者の減少により、間伐などの管理が行き届かない人工林も増えた。林内が暗くなれば下草が育ちにくく、昆虫や鳥類の生息環境も単調になる。
さらに、里山の利用変化も生物多様性の低下に関係している。かつては薪炭林や採草地として人が定期的に手を入れることで、明るい林や草地を好む生物が生きていた。しかし、燃料や農業の変化により里山が放置され、環境が単一化した地域もある。加えて、シカの増加による下層植生の食害、外来種の侵入、開発による森林の分断も問題である。
日本の森林の生物多様性を保全するには、第一に森林の種類や状態に応じた管理が必要である。人工林では適切な間伐を行い、広葉樹を混ぜるなどして多様な林相へ誘導する。自然性の高い森林では保護区を設定し、希少種の生息地を守る。里山では、草刈りや伐採、落ち葉利用など、人の手が入ることで保たれてきた環境を地域活動として再生する必要がある。
第二に、野生動物管理も不可欠である。シカの個体数管理、防護柵、植生回復を組み合わせなければ、森林の更新が進まない。第三に、森林を守る担い手を育てることが重要である。林業、行政、研究者、地域住民、学校が連携し、調査や保全活動に参加できる仕組みを整えるべきである。
森林の生物多様性保全は、利用を止めることだけでは実現しない。木材生産、水源涵養、防災、文化、教育を含め、森林を持続的に利用しながら、多様な生物が生きられる構造を回復することが必要である。
字数カウント: 907字



コメントを残す