広島市立大学 国際学部 前期日程 2020年度 小論文過去問解説(愛・生きづらさ・音楽学習)
問題の概要
令和2年度の広島市立大学前期日程小論文は、第1問が上田紀行『愛する意味』をもとに、悪魔祓い、共同体、孤独、生きづらさ、愛の作用を考える日本語文章読解・論述である。第2問は、音楽を聴きながら学習することの効果を扱う英文を読み、日本語説明と英作文で答える問題である。小論文としては、本文の要点を正確に拾い、最後の意見論述で本文の議論を自分の経験や社会認識に接続することが重要になる。
設問文
第1問 次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
問1 下線部について、悪魔祓いの儀式が果たしている役割は何か。本文にそくして2つ、それぞれ80字以内で答えなさい。
問2 下線部の「愛」の機能と作用について、筆者はどのように考えているか。100字以内でまとめなさい。
問3 下線部に対して、現代ではそれがどのように変化していると筆者は考えているか。100字以内で答えなさい。
問4 下線部とあるが、恋愛においてどのような変化が生じているか。本文にそくして80字以内で答えなさい。
問5 本文であげられている生きづらさの事例(1つでも複数でも可)について、および、それに対してどのように向かい合うべきかについて、あなたの考えを400字以内で論じなさい。
第2問 次の英文を読んで、あとの問いに答えなさい。
問1 下線部のthe Mozart Effectとはどのようなことか。解答欄を満たす程度の日本語で述べなさい。
問2 The Mozart Effect was rejected 10 years after it became popular. Recent research, however, confirms the benefits of listening to music, and several benefits are mentioned in the article. What are three of the benefits? Answer this question in English using words from the article.
問3 下線部にあるenvironmental conditionとtype of musicの具体例を本文から探し、解答欄を満たす程度の日本語で述べなさい。
問4 下線部について、次の2つに日本語で答えなさい。1) One final questionとはどのようなことか。2) この質問に対する筆者の考えを、本文中にあげられた研究例を用いて述べなさい。
問5 Music, literature, and art are essential parts of human lives, as the article on music and study suggests. Think about the role that art, literature, or music plays in your own life. Choose one of them, and explain its importance or the ways it benefits you. Write your answer in your own words in English in the space provided on the answer sheet. Be sure to include specific details or examples to support your ideas.
課題文の要点
第1問の本文は、スリランカの悪魔祓いを、病んだ人を共同体の中に戻す儀式として説明する。悪魔祓いは、苦しみの原因を本人や周囲のせいにせず、悪魔のせいにして笑いと儀礼の中で回復を支える。筆者は、日本社会では「迷惑をかけない」秩序が強すぎるため、弱った人が孤立し、自分を不要な存在のように感じてしまうと考える。愛は本来、世界の秩序を維持するだけでなく、硬直した秩序を上書きし、命の通ったものにする作用をもつ。
第2問の英文は、「モーツァルト効果」が人の知能を高めるという説は否定されたが、音楽には幸福感、興奮、ストレス軽減、記憶形成の促進などの効果があると述べる。一方、歌詞のある音楽は読解や作文の妨げになり、試験環境が無音である場合、音楽を聴いて覚えた内容は思い出しにくいこともある。結論として、音楽が学習を助けるかは個人や環境に依存し、歌詞のない落ち着いた音楽を背景に使うのが望ましいとされる。
第1問・問1【解説】
設問条件の判定
- 制限字数: それぞれ80字以内
- 意見論述の要求: なし
- 選択テンプレート: 自由形式
- 判定根拠: 本文に即して、悪魔祓いの役割を二つ説明する問題である。
解答プロセス
設問は「役割」を二つ求めている。本文では、悪魔祓いは、心の痛手を悪魔のせいにして誰も傷つけない役割と、村人との交流の中で本人の存在感を回復させる役割をもつ。二つを分けて書く。
第1問・問1【解答】
1. 苦しみの原因を本人や周囲の責任にせず、悪魔のせいとして表現することで、誰も傷つけずに心の痛手を扱えるようにする役割。
2. 村人が集まる儀式の中で、病んだ人が他者との交流とまなざしを取り戻し、自分の存在感を確かめて回復する役割。
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第1問・問2【解説】
設問条件の判定
- 制限字数: 100字以内
- 意見論述の要求: なし
- 選択テンプレート: 自由形式
- 判定根拠: 筆者の考える「愛」の機能と作用を本文からまとめる説明問題である。
解答プロセス
本文では、愛は秩序維持の機能を持つ一方、硬直した秩序を上書きし、命の通ったものにする作用を持つとされる。単なる道徳や規則ではなく、弱った人を救う力としてまとめる。
第1問・問2【解答】
愛は、互いが居心地よく暮らすために世界の秩序を維持する機能をもつ。同時に、弱者を救えない硬直した秩序を上書きし、命の通った関係へ変える作用ももつ。
字数カウント: 75字
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第1問・問3【解説】
設問条件の判定
- 制限字数: 100字以内
- 意見論述の要求: なし
- 選択テンプレート: 自由形式
- 判定根拠: 本文中の「現代ではそれがどう変化したか」を説明する問題である。
解答プロセス
本文後半では、祭りや儀礼がもっていた狂気や怒りを受け止める力が弱まり、現代では暴力性が社会的な抗議ではなく、個人的・突発的・自傷的な形に変化していると説明される。これを簡潔にまとめる。
第1問・問3【解答】
祭りや儀礼が狂気や怒りを社会の中で受け止める力が弱まり、現代では暴力性が社会的抗議ではなく、個人的・突発的・自傷的な形で表れやすくなっている。
字数カウント: 73字
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第1問・問4【解説】
設問条件の判定
- 制限字数: 80字以内
- 意見論述の要求: なし
- 選択テンプレート: 自由形式
- 判定根拠: 恋愛に関する本文内容を要約する説明問題である。
解答プロセス
本文は、最近の恋愛が、相手に深く踏み込まず、つきあっている人がいるとすぐ引き下がるような、物分かりのよい関係になっていると述べる。恋愛に含まれる欲望や暴力性を見つめる契機が弱まる点を入れる。
第1問・問4【解答】
相手に深く踏み込まず、物分かりよく引き下がる恋愛が増え、欲望や暴力性を自覚し自分を見つめる契機が弱まっている。
字数カウント: 58字
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第1問・問5【解説】
設問条件の判定
- 制限字数: 400字以内
- 意見論述の要求: あり
- 選択テンプレート: 5STEPs法
- 判定根拠: 生きづらさの事例を選び、それにどう向かい合うべきかについて自分の考えを論じる問題である。400字以内だが、ユーザー指定に合わせ、論述は5STEPs法で構成する。
解答プロセス
STEP1 議論の整理: 設問は、本文中の生きづらさの事例を取り上げ、それにどう向かい合うべきかを問う。本文には、自殺、いじめ、貧困、家庭内不和、相談できず孤立する若者、「迷惑をかけない」を優先して本音を出せない社会が示されている。
STEP2 問題発見: 問題は、弱った人が助けを求める前に「自分は迷惑だ」と感じ、共同体から自分を切り離してしまう点にある。
STEP3 論証: なぜなぜ分析で考える。第一に、助けを求めにくいのは、迷惑をかけないことが道徳化されているからである。第二に、その背景には、失敗や弱さを回復の過程として見せる場が少ないことがある。第三に、回復の姿を見ない子どもは、一度失敗したら終わりだと感じやすくなる。
STEP4 解決策・結論: 向かい合うには、弱さを隠すのではなく、相談、支援、回復を共同で見えるものにする必要がある。
STEP5 吟味: ただし、単に「周囲に頼れ」と言うだけでは本人を追い詰める。学校、家庭、地域、SNSの中に、小さく本音を出せる複数の窓口を用意することが必要である。
第1問・問5【解答】
本文で最も重要な生きづらさは、「迷惑をかけない」ことを優先し、悩みを相談できずに孤立する若者の姿である。
この問題は、本人の弱さだけでは説明できない。日本社会では、秩序を乱さないことが美徳とされるため、苦しい人ほど「こんな自分は迷惑だ」と感じやすい。
その結果、いじめ、貧困、家庭内不和のような悩みがあっても、助けを求める前に自分を責め、社会から切り離されてしまう。
だから必要なのは、弱った人を特別視せず、相談し、支えられ、回復する姿を社会の中で見えるようにすることだ。学校や地域に、雑談のように本音を出せる場を増やすべきである。
その場は、相手を評価する場ではなく、悪魔祓いのように苦しみを本人の罪にしない場でなければならない。弱さを共同で抱え直すことが、生きづらさへの現実的な向かい合い方である。
字数カウント: 335字
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第2問・問1【解説】
設問条件の判定
- 制限字数: 解答欄を満たす程度
- 意見論述の要求: なし
- 選択テンプレート: 自由形式
- 判定根拠: 英文中の概念説明を日本語でまとめる問題である。
解答プロセス
Mozart Effectは、1990年代初めに提唱され、クラシック音楽、とくにモーツァルトを聴くと空間推論能力やIQが上がるとされた説である。答案では、誰がどう賢くなるとされたかを入れる。
第2問・問1【解答】
クラシック音楽、とくにモーツァルトのピアノソナタを聴くことで、脳が刺激され、学生や子どもの空間推論能力やIQが高まるとされた説。
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第2問・問2【解説】
設問条件の判定
- 制限字数: 英文で解答
- 意見論述の要求: なし
- 選択テンプレート: 自由形式
- 判定根拠: 本文から音楽を聴く利点を三つ、英語で抜き出し気味に答える問題である。
解答プロセス
本文は、音楽がドーパミン放出を促し幸福感・興奮を生むこと、ストレスと不安を減らすこと、記憶形成を助けることを挙げている。三つを並列で答える。
第2問・問2【解答】
It promotes feelings of happiness and excitement, helps us reduce stress and anxiety, and helps us improve memorization.
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第2問・問3【解説】
設問条件の判定
- 制限字数: 解答欄を満たす程度
- 意見論述の要求: なし
- 選択テンプレート: 自由形式
- 判定根拠: environmental conditionとtype of musicの具体例を本文から探す問題である。
解答プロセス
environmental conditionは、記憶した環境と試験環境が同じかどうかに関係する。type of musicは、歌詞がある音楽か、歌詞のない落ち着いた音楽かに関係する。本文の対比を入れる。
第2問・問3【解答】
environmental conditionの具体例は、音楽を聴きながら覚えたのに、試験は無音の環境で行われる場合である。type of musicの具体例は、読解や作文を妨げる歌詞つきの音楽と、集中を邪魔しにくい歌詞のない落ち着いた音楽である。
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第2問・問4【解説】
設問条件の判定
- 制限字数: 日本語で説明
- 意見論述の要求: なし
- 選択テンプレート: 自由形式
- 判定根拠: 英文中の問いと、それに対する筆者の考えを本文の研究例で説明する問題である。
解答プロセス
One final questionは、Mozart Effectが完全な神話なのか、つまりクラシック音楽が学習に何の効果もないのかという問いである。本文は、IQを上げる証拠はないが、フランスの研究では講義中にクラシック音楽が流れると学生が落ち着き、情報を受け取りやすくなり、小テスト成績がよかったと述べる。
第2問・問4【解答】
1. One final questionとは、Mozart Effectは結局完全な神話であり、クラシック音楽は学習に何の効果もないのかという問いである。
2. 筆者は、クラシック音楽が知能を高めるとは言えないが、学習を助ける場合はあると考えている。フランスの研究では、講義中に背景音楽としてクラシック音楽を聴いた学生の方が小テストの成績がよく、音楽が学生を落ち着かせ、情報を受け入れやすくしたと説明されている。
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第2問・問5【解説】
設問条件の判定
- 制限字数: 解答欄内の英作文
- 意見論述の要求: あり
- 選択テンプレート: 5STEPs法
- 判定根拠: art, literature, musicのうち一つを選び、自分の生活での役割や利益を具体例とともに英語で説明する意見論述であるため、5STEPs法で構成する。
解答プロセス
STEP1 議論の整理: 設問は、music, literature, artの一つを選び、自分の生活での重要性や利益を英語で説明するよう求める。具体的な詳細や例を入れることも条件である。
STEP2 問題発見: 答案ではmusicを選び、音楽が単なる娯楽ではなく、気持ちを整え、集中に入る合図になると示す。
STEP3 論証: 帰納法で考える。例として、勉強前に歌詞のない音楽を聴く、緊張した日に落ち着いた曲を聴く、友人と曲を共有して気持ちを伝える。そこから、音楽は感情調整とコミュニケーションを支えると導く。
STEP4 解決策・結論: 結論は、音楽は自分の心を整え、他者とつながるために重要だということにする。
STEP5 吟味: 英文本文の注意点も踏まえ、学習中は歌詞つきの音楽を避け、使い方を選ぶ必要があると入れる。
第2問・問5【解答】
Music plays an important role in my life because it helps me control my feelings. For example, before I start studying, I sometimes listen to quiet music without lyrics. It makes me calm and tells my mind that it is time to concentrate. When I feel nervous or disappointed, music also helps me step back from my feelings and think more clearly. In addition, sharing songs with my friends is a way to communicate. Sometimes a song can express a feeling that is difficult to explain in ordinary words. Of course, I should not listen to loud music with lyrics when I need to read or write. However, if I choose music carefully, it gives me energy, comfort, and a better connection with other people.
字数カウント: 125 words



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