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岐阜大学 地域科学部 前期日程 2018年度 小論文過去問解説(身体能力論と小さな物語)

岐阜大学 地域科学部 前期日程 2018年度 小論文過去問解説(身体能力論と小さな物語)

問題I・問1【設問文】

問1 「黒人の身体能力は生まれつき優れている」という主張がアメリカで登場する理由を、本文の主張として300字程度で説明しなさい。

問題I・問1【解説】

課題文は、黒人選手の活躍そのものではなく、それを「生まれつきの身体能力」と説明したがる社会的背景を問うている。1930年代以降、黒人アスリートの数的増加、スポーツ産業の発展、人種的統合をめぐる議論が進み、黒人の活躍を人種的特性として語る言説が広がった。

問題I・問1【解答プロセス】

  • STEP1 要件確認: 「本文の主張として」300字程度で説明する。
  • STEP2 問題設定: 活躍の事実と、生得的能力という解釈を区別する必要がある。
  • STEP3 論証: スポーツ界で黒人選手が可視化され、社会がその理由を人種で説明しようとした。
  • STEP4 解決策: 主張は科学的事実というより、アメリカ社会の人種認識の中で生まれた。
  • STEP5 吟味: 個々の選手の努力や環境を消してしまう危険を確認する。

問題I・問1【解答】

この主張が登場したのは、黒人選手の活躍がスポーツの場で急速に目立つようになったからである。課題文では、1930年代に黒人が集団として優れた身体能力を持つという言説の原型が現れたとされる。背景には、学校教育や社会教育でスポーツが奨励され、プロ選手を目指す黒人の若者が増え、野球、バスケットボール、フットボールなどで才能を発揮したことがある。

しかし、そこで社会は、競技環境、訓練、職業機会、差別構造の中での上昇志向を十分に見ず、目立った成果を「黒人は生まれつき身体能力が高い」という人種的説明に置き換えた。つまりこの主張は、黒人選手の実績が増えた事実と、アメリカ社会に残る人種的な見方が結びついて生まれたものである。

字数カウント: 301字

問題I・問2【設問文】

問2 「黒人の身体能力は生まれつき優れている」という主張に対する筆者の見解を、理由に触れつつ300字程度で説明しなさい。

問題I・問2【解説】

筆者は、黒人選手の活躍を否定しているのではない。問題にしているのは、その活躍を「生まれつき」という人種的本質に還元する見方である。環境、機会、競技ごとの歴史、メディア表象を考えずに身体能力だけで説明することは、差別的な固定観念を再生産する。

問題I・問2【解答プロセス】

  • STEP1 要件確認: 筆者の見解と理由を300字程度で説明する。
  • STEP2 問題設定: 生得説は一見称賛に見えて、個人差や社会的条件を消す。
  • STEP3 論証: 選手の活躍は、競技機会、訓練、社会的背景、歴史的条件の結果でもある。
  • STEP4 解決策: 筆者は人種的ステレオタイプとしてこの主張を批判している。
  • STEP5 吟味: 能力差の議論をする場合も、人種で単純化してはならない。

問題I・問2【解答】

筆者は、「黒人の身体能力は生まれつき優れている」という主張を、人種的ステレオタイプとして批判している。なぜなら、その主張は黒人選手の活躍を説明しているように見えて、実際には選手個人の努力、競技環境、教育制度、職業機会、スポーツ産業の発展といった社会的条件を見えなくするからである。

また、生まれつき優れているという説明は、称賛の形をとっていても、人種ごとに固定した性質があるという考え方を強める。これは、黒人を知的能力ではなく身体能力に結びつけて理解する古い差別的表象とも連続する。したがって筆者は、競技成績を人種の本質に還元せず、歴史的・社会的文脈の中で理解すべきだと考えている。

字数カウント: 296字

問題II・問1【設問文】

問1 大きな物語はなぜ小さな物語をときに抑圧するのか。本文以外の例を挙げながら説明しなさい。(200字程度)

問題II・問1【解説】

「大きな物語」は、地球温暖化対策、生物多様性保全、景観保全のように、社会的に重要な目標を掲げる。一方で、地域住民の生活史や自然との関わりという「小さな物語」を見落とすと、善意の政策が現場を圧迫する。

問題II・問1【解答プロセス】

  • STEP1 要件確認: 本文以外の例を入れ、200字程度で説明する。
  • STEP2 問題設定: 大きな目的は正当性が強いため、現場の声を後回しにしやすい。
  • STEP3 論証: 防災、観光、環境政策などでも地域の生活が犠牲になりうる。
  • STEP4 解決策: 抑圧は、抽象的な正しさが具体的な暮らしを覆うときに起こる。
  • STEP5 吟味: 大きな物語自体を否定せず、調整の必要を示す。

問題II・問1【解答】

大きな物語は、社会全体の正しさを掲げるため、地域の人々の具体的な経験を小さなものとして扱いやすい。たとえば観光振興を理由に古い商店街を再開発すると、町が活性化する一方で、長年の店、近所づきあい、祭りの準備場所が失われることがある。大きな目的が強いほど、個々の生活の意味が見えにくくなり、小さな物語を抑圧するのである。

字数カウント: 162字

問題II・問2【設問文】

問2 現代社会における小さな物語の意味を本文以外の例を示しつつ述べなさい。(300字程度)

問題II・問2【解説】

小さな物語とは、地域の人々が自然、仕事、生活、人間関係の中で積み重ねてきた具体的な経験である。現代社会では、制度や専門知だけでは解けない問題が多いため、小さな物語は合意形成や地域再生の基盤になる。

問題II・問2【解答プロセス】

  • STEP1 要件確認: 設問は「現代社会における意味」を問うている。
  • STEP2 問題設定: 現代の制度は効率的だが、生活の細部を取りこぼす。
  • STEP3 論証: 本文以外の例として、災害復興や子育て支援を使える。
  • STEP4 解決策: 小さな物語は、当事者の知恵を政策や協働につなげる意味を持つ。
  • STEP5 吟味: 個別経験だけでは全体調整が難しいため、共有の場が必要である。

問題II・問2【解答】

現代社会における小さな物語の意味は、制度や専門家の計画だけでは見えない生活の実感を、社会の意思決定に取り戻す点にある。たとえば災害復興では、単に堤防や住宅を整備すればよいわけではない。住民にとって、どの道が通学路だったか、どの場所で近所づきあいが生まれたか、どの祭りが地域を支えていたかという記憶も重要である。

こうした小さな物語を聞き取ることで、復興計画は効率だけでなく、暮らしの継続を支えるものになる。もちろん個別の思いだけでは全体の合意は作れない。だからこそ、小さな物語を共有し、互いに調整する場を設けることが、現代の地域社会に必要である。

字数カウント: 293字

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