山形大学 地域教育文化学部地域教育文化学科児童教育コース 前期日程 2020年度 小論文過去問解説(死の文化と臓器移植)
問1【設問文】
問1 本文中の下線部のように、移植される臓器を「無人格の部品」とみなすことと、同様の考え方を表現しているものを、ア〜エから1つ選んでください。ア 死者の骨をひろうことで、その人の死が了解できること。イ 火葬場から遺骨を書留郵便で送り届けること。ウ ドナーのからだの一部が、レシピエントのからだのなかで生きていると考えること。エ 人の「死体」を「遺体」とみなすこと。
問1【解説】
「無人格の部品」とは、死者の身体の一部を、その人の人格や関係性から切り離された物として扱う見方である。選択肢イは、遺骨を郵便物のように扱う点で、身体を人格から切り離す考え方に近い。
問1【解答プロセス】
- 設問条件の整理: 下線部と同じ考え方を選ぶ選択問題である。
- 対応方針: 人格性を認める選択肢ではなく、物として扱う選択肢を選ぶ。
- 答案構成: 選択肢を示し、理由を一文で説明する。
- 確認: ウやエは身体と人格・死者のつながりを残すので不適切である。
問1【解答】
答えはイである。火葬場から遺骨を書留郵便で送り届けることは、遺骨を死者の人格や遺族との関係から切り離し、運搬可能な物として扱う発想を含むため、移植される臓器を「無人格の部品」とみなす考え方に近い。
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問2【設問文】
問2 本文中の空欄に入る適切な語を、それぞれア〜ウから選んでください。ア もちろん イ むしろ ウ いずれにせよ。ア ドナー イ レシピエント ウ 医療関係者。
問2【解説】
課題文は、日本では臓器を死者のからだの一部と考えやすく、臓器提供を「いのちの贈り物」と見る心性があると述べている。その流れでは、いのちを贈られたと感じるのは、移植を受けた側だけでなく、むしろ提供者の家族である、という逆説が述べられている。
問2【解答プロセス】
- 設問条件の整理: 文脈に合う接続語と人物を選ぶ。
- 対応方針: 直前の「いのちの贈り物」という表現が誰に向けられているかを確認する。
- 答案構成: 空欄の語と理由を示す。
- 確認: 筆者は日本的な死者観を説明しているため、提供者側の慰めに注目する。
問2【解答】
接続語は「むしろ」、人物は「ドナー」が適切である。課題文では、臓器提供によって患者が助かるだけでなく、提供者の家族が「あの子のからだの一部が生きている」と感じ、慰められることが述べられている。したがって、「いのちを贈られたのは、むしろドナーの家族のほうである」という趣旨になる。
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問3【設問文】
問3 一昔前の死の文化とその変容について、本文の内容を踏まえた上で、あなたの見解を400字以上600字以内で書いてください。
問3【解説】
課題文は、遺体や遺骨を単なる物ではなく死者の人格と結びつけて扱ってきた日本の死の文化が、臓器移植、散骨、宇宙葬などによって変容していると述べる。答案では、変化を否定するだけでなく、医療や個人の選択を認めながら、死者を悼む関係性をどう保つかを論じる必要がある。
問3【解答プロセス】
- 議論の整理: 設問は「一昔前の死の文化」と「その変容」を本文に即して整理することを求めている。
- 問題発見: 死者の身体を人格ある存在として扱う感覚と、医療・葬送の合理化が衝突している。
- 論証: 臓器移植では臓器が部品化され、散骨や宇宙葬では遺骨の扱い方も多様化する。
- 結論: 変容を受け入れつつ、死者と遺族の意味づけを尊重する仕組みが必要である。
- 吟味: 伝統を固定化すれば本人の意思を損ない、合理化だけなら悼みの感情を軽視する。
問3【解答】
一昔前の死の文化では、死者の身体や遺骨は単なる物ではなく、その人の人格や家族との関係を帯びたものとして扱われてきた。課題文にも、遺骨を拾うことで死を了解することや、死体ではなく遺体と呼ぶ感覚が示されている。そこでは、死者のからだに触れ、弔いの手順を踏むことが、残された人の悲しみを受け止める働きをもっていた。
しかし現在は、臓器移植、散骨、宇宙葬などによって、死者の身体の扱い方が多様化している。移植医療では臓器を「無人格の部品」として扱う必要があり、散骨では遺骨を墓に納めるという従来の形から離れる。これは医療の進歩や個人の選択を広げる点で重要である。
一方で、合理性だけを優先すると、遺族が死者とのつながりをどこで確認すればよいのかが見えにくくなる。ドナー家族がレシピエントを知りたいと感じるのも、死者の一部がどこかで生きていると考えたいからである。
したがって、死の文化の変容は否定すべきではないが、本人の意思、遺族の感情、医療上の必要を丁寧に調整するべきである。死者の身体を物として扱う場面が増えても、死者を悼む意味まで失わせないことが、現代の死の文化に求められる。
字数カウント: 527字



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