山形大学 人文学部人間文化学科 前期日程 2015年度 小論文過去問解説(アイデンティティと国境を越えた連帯感)
設問一【設問文】
設問一 傍線部(A)「アイデンティティー」(1ページ)とはどのような意味か。筆者の考えを踏まえた上で、本文の事例を用いて、200字〜250字で説明しなさい。
設問一【解説】
課題文は、国籍だけが「私は何者か」を決めるわけではなく、宗教、世代、女性意識、高齢者意識など、国境を越えて人を結びつける自己理解があると述べている。アイデンティティは、自分が何に属し、何を大切にし、誰とつながっていると感じるかを示す概念である。
設問一【解答プロセス】
- STEP1 要件確認: 「筆者の考え」と「本文の事例」を入れ、200〜250字で説明する。
- STEP2 方針: 国家・国民意識を出発点にしつつ、ノンナショナルなつながりへ広げる。
- STEP3 構成: 定義、国家の例、国家を越える例の順にまとめる。
- STEP4 吟味: 単なる「個性」ではなく、自己理解と所属意識として説明する。
設問一【解答】
筆者にとってアイデンティティーとは、自分が何者であるかを理解するための所属意識や自己規定である。多くの人は、外国に出たときに自分を日本人、アメリカ人、中国人など国家に属する存在として意識する。しかし本文は、それだけでなく、宗教、女性意識、世代、高齢者としての経験なども、人を結びつけるアイデンティティーになると述べる。つまりそれは、国境の内側だけでなく、共通の価値や経験によって国境を越えて形成される自己理解である。
字数カウント: 213字
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設問二【設問文】
設問二 傍線部(B)「国家の相対的弱体化」(4ページ)とあるが、筆者はこれをどのような意味で用いているか。「宗教」と「女性意識」という言葉を用いて、250字〜300字で説明しなさい。
設問二【解説】
「国家の相対的弱体化」は、国家が消滅するという意味ではない。宗教や女性意識のように、国家を越える価値や連帯が強まり、人々の自己理解や行動を国家だけでは説明できなくなるという意味である。
設問二【解答プロセス】
- STEP1 要件確認: 「宗教」「女性意識」を必ず使い、250〜300字で説明する。
- STEP2 方針: 国家の力が絶対でなくなる現象として書く。
- STEP3 構成: 宗教の越境性、女性意識の越境性、国家との関係の順にまとめる。
- STEP4 吟味: 国家否定ではなく「相対的」として説明する。
設問二【解答】
筆者がいう「国家の相対的弱体化」とは、人々の行動や自己理解を国家だけで統合できなくなることを指す。たとえば宗教は、イスラムやキリスト教の宗派のように国境を越えて信者を結びつけ、ときには国家への帰属より強い意味をもつ。また女性意識も、参政権、職業、教育、身体の自由を求める運動として、欧米だけでなくアジアにも広がった。これらは国民としての立場を消すものではないが、人々が国家とは別の基準で連帯し、行動する回路を作る。こうした動きは、国家が依然として重要であっても、人々を動かす価値や連帯が国家の枠外にも形成されていることを示している。
字数カウント: 277字
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設問三【設問文】
設問三 傍線部(C)「国境を越えた連帯感」(8ページ)をもたらすものは、筆者の例示したものを含めて様々な例が考えられる。筆者の主張を踏まえた上で、あなた自身が考える例を一つ挙げ、その具体例から生じている現象が「国境を越えた連帯感」を示すと言える理由とその現象に対するあなたの意見を400字〜500字で述べなさい。
設問三【解説】
設問三は、本文の主張を踏まえたうえで、本文以外の具体例を挙げて論じる問題である。解答例では、気候変動に対する若者の国際的な活動を例にする。国や言語が違っても、同じ将来不安と責任意識を共有している点が「国境を越えた連帯感」にあたる。
設問三【解答プロセス】
- STEP1 要件確認: 設問は「例」「理由」「意見」を400〜500字で述べることを求めている。
- STEP2 問題設定: 国家単位の利害だけでは、地球規模の課題に対応しにくい。
- STEP3 論証: 気候変動をめぐる若者の活動は、居住国が異なっても同じ未来への不安を共有する点で連帯を生む。
- STEP4 解決策: 国境を越えた連帯は、国家を否定するのではなく、国家を動かす市民的圧力になる。
- STEP5 吟味: ただし、各国の生活条件の違いを無視した一律の主張には注意が必要である。
設問三【解答】
私が考える例は、気候変動対策を求める若者の国際的な活動である。近年、各国の若者が、将来世代の生活を守るために温室効果ガス削減を求め、学校、地域、インターネット上で意見を発信している。これは筆者が述べるような、国家だけでは説明できないノンナショナルな連帯の一つである。
この現象が「国境を越えた連帯感」を示すと言えるのは、参加者が同じ国民であるからではなく、同じ地球環境の中で未来を生きる世代であるという意識によって結びついているからである。気候変動の被害は国ごとに異なるが、海面上昇、異常気象、食料不安は国境で止まらない。そのため、若者は国籍を越えて共通の危機感を持つ。
私は、このような連帯は必要だと考える。ただし、先進国と途上国では排出責任や生活条件が違うため、同じ行動を一律に求めるだけでは不公平になる。国境を越えた連帯は、互いの違いを認めたうえで、国家に長期的な責任を果たさせる力として働くべきである。
字数カウント: 450字



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